わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

大学のPDCA

文科省様たちは、PDCAの改善サイクルを回せという。しかし、Planというのは何か、何をDoするのか、そして何をどうCheckするのか、Actionとはどういう事なのか、根本的に理解が欠けている。もちろん文科省様はご理解なさっているのかもしれないが、末端の一般ピープルもとい、大学の面々は、よく理解していない。というか、間違っている。
稀に、会議の場などで、企業出身の教授が業を煮やして発言することもあるが、まったく議論が噛み合わない。結局は、「こういう事なんです」と、大学流のPDCAを説かれる。文句をつけた側は「はぁそうですか」と退くしかない。

http://d.hatena.ne.jp/side40/20120525/p1

大学を含めた教育機関におけるPDCAというと,かつて2つ,本を読んで,書き出したことがあります.

PDCAサイクル、3つの誤読―サイクル過程でないコミュニケーション過程による評価活動の提案に向けて (シリーズ「大学評価を考える」)

PDCAサイクル、3つの誤読―サイクル過程でないコミュニケーション過程による評価活動の提案に向けて (シリーズ「大学評価を考える」)

大学評価を考えるにあたり,現状の,PDCAの適用というのはおかしなことをしている,という内容です.代案は,サイクル過程=成果志向的関係性ではなく,コミュニケーション過程=了解志向的関係性(p.97)です.
(略)
後で読み直すかもしれない話や語句として,「昨年度まで採択をうけてきたXというプログラム(引用者注:文科省のGP事業のこと)は効果があがらなかったため,今回採択をうけたYというプログラムを計画した」(p.15)が,大学の運営においてPDCAサイクルに組み込めるという話,それと「ゲシュタポ大学」(p.89)を書いておくことにします.

PDCA学び直し

このPDCAサイクルは,数値目標に基づいた成果主義として,二〇〇二〜〇三年ごろから教育実践における学校の「説明責任論」(アカウンタビリティ)と一体となって,今や教育界を席巻している概念です.
文部科学省はこの考え方を活用しながら,全国学力テストの実施によって,Pの「企画・立案」とCの「検証・評価」を行う権限を握り,Aの「実行・改善」(引用者注:書かれていないDについては,この引用の一つ前の段落に『Do(実施)』とあります.),つまり教育改革の舵を握ろうというわけです.学力テストを武器にした,国家によるみごとな把握方法と言えます.
(『「全国学力テスト」はなぜダメなのか 本当の「学力」を獲得するために』p.24; 図解のすすめ,全国学力テストへの批判より孫引き)

国が地方を信頼せず,国が目標を設定し,それを各学校があたかも「主体的」であるかのように思いこまされて実行させられる.しかもそれが外部の第三者機関による評価に付され,改善を迫られるシステムとは,何という中央集権的,管理主義的な発想であり構造でしょうか.
(同p.25)

最後の引用について,教師や学校が学習者(児童・生徒・学生)に目標を設定し,それを各学習者があたかも「主体的」であるかのように思いこまされて実行させられる…と書き換えることができます.これは,教育の典型的なやり方です.どのようにすればうまくいくかについては,別件で読んだり検討したりしてきた「教育評価」が不可欠なように思います*1教育機関のマネジメントを理解するために,読むべき本,知っておくべきことは,また別にありそうです*2
話を変えて…

私が「保証」にこだわっているのは、ISO-9000にしても、14000にしても、絶対的な質を「保証」するものではないからだ。たとえば、「当社の製品はISO-9000によって品質が保証されています」というのは誤りだ。セールストークではあるかもしれないが。あくまで私の理解だが、上のようなISO規格では、質の絶対値が基準を上回っているかどうかを測定するものではない。だから、質そのものを保証するものではない。質が良いと強く推察される、といったレベル。

http://d.hatena.ne.jp/side40/20120525/p1

毎年,情報セキュリティの第14回授業あたりで言っていることがあります.

  • セキュリティのマネジメントはISMS
  • 製品などの品質マネジメントはISO 9000
  • 環境のマネジメントはISO 14000
  • 大学の技術者教育は,JABEE

学科内でJABEE認定のため,いろいろしてきた経験から言うと,上の引用にある質の保証のもっとも大切な要素は,「学習・教育目標」の設定のところにあります.学習・教育目標は,認定を受けるコースのみならず所属する学部や大学の使命・目的などに基づいて設定しますが,何でもいいというわけではなく(そしてもちろん,他大学などのコピペでいいというわけでもなく),JABEEの定める認定基準と対応がとれていることを,まずは認定を受ける側が確認し,そして審査の対象となります.これによって,質の保証を目指しているわけです.
補足1:JABEEの認定基準は,毎年少しずつ改訂されています.JABEEの認定を受けたあと,すぐにというわけではないにしても,次回,認定を受けるときには,対応が必要となります.
補足2:学習・教育目標の設定が,認定を受けるためのすべてではなく,他に重要な活動として,様々な種類の,根拠資料の収集整理があります.http://www.jabee.org/OpenHomePage/q&a0204-0509.htmをご覧ください.
といったところで,質の「保証」に関しては,JABEEであれISOの何であれ,認定を受ける企業・組織により異なる,言わば内側からの保証と,それぞれの規格や認定制度において規定される,外側からの保証があって,成立しているのかなと考えています.学習・教育目標に対応するものと,認定基準に対応するものが,別々のタイミングで改訂されることも,無視するわけにはいきません.
大学に限定することなく,PDCAについての個人的な思いを書いておくと,自分の手元で,問題解決支援や発想支援*3のツールとして使うには,良い道具になってくれると思います.組織として,きちっとPDCAで管理運用していくには,マネジメントの知識経験を持つリーダーと,組織に関わる全員が共通して目を通しておくべき,PDCAの本または資料が必要なように感じます.

*1:その一方で,授業内外で,学習者をよく観察し,発言を“すくい上げる”ことも必要になります.設計能力とコーディング能力は,相通じるとも相異なるとも言えます.

*2:難波のジュンク堂で「大学論」とラベルづけされた周辺の本を見ると,そんなふうに感じます.ここ数か月は,足を運んでいませんが.

*3:単発の問題解決よりも,中長期的に運用してアラを取り除き,完成度を高めるような活動やものづくりの計画を,想定しています.