わさっきhb

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全国学力テストに望まれていること

事業仕分けで方向性の再検討が迫られた,全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)について論じるとき,「全国学力テストの目的は…」と書けばかっこいいのですが,文部科学省が公表している実施要領を見ると,目的が複数あり,そのため,人によって解釈の仕方に差があります.
それを回避するためか,「全国学力テストの意図は…」「全国学力テストの趣旨は…」という書き方も見かけますが,書き手の持論が強く出ており,その分,客観性が十分に得られておらず,国民的なコンセンサスへの道はずいぶん遠いように感じます.
目的/意図/趣旨ではなく,もっと緩やかに…「望まれていること」,あるいは「全国学力テストの実施で期待されていること」をできるだけたくさん並べてみれば,それをもとに,自分の興味がどこにあるかだとか,発言者(新聞社だとかブログ主だとか)の間の類似性がどうなっているのかとか,見出せるかなと妄想するに至りました.
前置きはこのくらいにして,リストです:

  • 「平成21年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領」に書かれている調査目的
    • 国が,教育・教育施策の成果と課題を検証する.
    • 教育委員会や学校などが,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する.
    • 学校が,各児童生徒の学力や学習状況を把握する.
  • 地域比較
    • 都道府県間で,学力や学習状況を比較する.
    • 同一都道府県の市町村間で,学力や学習状況を比較する.
    • 同一市町村の学校間で,学力や学習状況を比較する.
    • 同一学校の学級間で,学力や学習状況を比較する.
    • 国立・公立・私立の間で,学力や学習状況を比較する.
    • 姉妹都市に代表される何らかの連携関係を持つ都道府県・市町村・学校・学級の間で,学力や学習状況を比較する.
  • 経年比較
    • 実施年度間で,学力や学習状況を比較する.
    • 1960年代に実施された学力テストの結果と比較する.
    • 将来実施される学力テストと比較可能なように,情報を整理する.
  • 序列化と競争
    • 都道府県間で順位を付け,教育施策・方法の活性化を図る.
    • 同一都道府県の市町村間で順位を付け,教育施策・方法の活性化を図る.
    • 同一市町村の学校間で順位を付け,教育施策・方法の活性化を図る.
    • 同一学校の学級間で順位を付け,教育方法の活性化を図る.
  • 教育実施者の評価
    • 地域比較を通じて,よい教育をしている都道府県・市町村・学校を発見・奨励する.
    • 学級間比較を通じて,よい教育をしている教員を発見・奨励する.
    • 地域比較を通じて,適切な教育をしていない都道府県・市町村・学校を発見し,てこ入れを行う.
    • 学級間比較を通じて,適切な教育をしていない教員を発見し,てこ入れを行う.
  • 学力・教育目標の周知
    • 「学力」を統計的かつ定量的に扱えるようにする.
    • 「学力とは何か」の議論を促す.
    • 身に付けておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容を提供する.*1
    • 実生活において不可欠であり常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能を確認する.
    • 知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力を引き出す.
    • 様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力などにかかわるケースを出題する.
    • 出題内容の公表を通じて,知識・技能として身につけておくべき事項を,学校の内外で共有する.
    • 結果の返却により,解答者(児童・生徒)が自分の持つ知識・技能を確認する.
  • コスト意識
    • 全国共通の問題により,各自治体や学校で調査に要するコストを削減する.
    • 抽出調査により,分析に十分な数量の答案データを収集する.
    • 出題内容の再利用により,毎年問題作成をすることなく調査できるようにする.

*1:ここから始まる4項目は,「平成21年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領」p.2の記述を使用しています.