わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

指導したこと(2010年1月7日)

  • 論文の出だし
  • 関連研究をどこに置くか
  • 英語
  • 自作の最初は
  • どこのエラーか
  • 準備で書くこと
  • 参考文献にWikipedia禁止

論文の出だし

出だしについて,「XとしてYというものがあり」というのは,Yがあまり知られていない事物のときに使える表現です.
今の原稿では,Yに,誰もが知っているものを書いています.これは,悪く言えば,読者を馬鹿にしたような書き方に思えます.
素直に,「Yは,Xとして広く普及しており」としましょう.

関連研究をどこに置くか

3日前に見た原稿では,関連研究の章をラス前に置いていましたが,今見ると,イントロの直後に移動していますね.
論文構成として,どっちでもいいのですが,イントロの直後に置く場合には,注意することが一つ,あります.
その中に,「本研究(本論文)で採用した手法」を書くことができないのです.
Cのソースファイルは先頭から解釈されるので,独自の型や関数プロトタイプは,その型名や関数名を使用するよりも前に書かないといけません.これと同様に,論文も,先頭から読むという建前がありますので,先取りして書くことが,原則として許されないのです.
論文の構成という点で,もう少し具体的に言いましょうか.
1章の中で,目的すなわち「何をするか」を述べていますね.そして次の章で,関連する先行研究を挙げています.
だから,目的が異なっている場合に,それを指摘するのは,まったく問題ありません.
ですが,手段,すなわち採用する手法が異なっていることを,あなたが認識していても,まだ,「自分の手法」を言っていませんね.
そこは比較よりもむしろ,先行研究で採用している手法に,欠陥や限界があることを述べたいところです.
関連研究を複数挙げて,既存のアプローチに共通する問題点を取りまとめたあと,「これを使えばいけるのではないか」といった趣旨で,自分の手法を匂わせるのは,別段悪くありませんし,私自身もかつて,そういう書き方をしたことがあります.

英語

本文より前に,タイトル,アブストラクト,キーワードで英語を書く必要があるのですね….
文法的な注意事項もあれこれありますが,あえて一点だけ指摘するなら,「単数か複数か」を間違えないようにしましょう.
日本語ではおんなじ語句であっても,英語で書くときは,ある文では複数形,別の文では単数形とするケースもあります.
複数形にしてはいけない名詞というのも,あります.単数形のように書いても複数扱い,またその逆もあります*1
名詞の形容詞的用法については,必ず,単数形にしてください*2.キーワードも,単数形が原則です.

自作の最初は

ふむ,ツールを使うのではなく,自分でコードを書いていこうという方針にするのですね.了解しました.
それでコードを見せてもらいましたが,「何をしたいか」が明確になっている状況で,次にするのは,いきなりコードにするのでもなく,データ構造だとかクラスのメンバだとかを決めるのではなくですね…
入力と出力を,決めてください.
まずですね,入力ファイルを,テキストエディタで作ってみるのです.そしてそれに対応する出力ファイルも.
1組で不十分なら,何組か作ってください.
そしてそれらから共通点を確認し,数値だけ違うものは,「パラメータ」として括りだしておきましょう.
そこまでしてから,コーディングです.そういう入力を受け取る処理と,出力をファイルに書き出す処理から,書き始めます.処理に必要な属性を持つ,クラスあるいは構造体といった独自の型も,その段階で定義すればいいのです.
プログラムは,入力を得て処理し,出力するという「流れ」として理解するだけでなく,このように入力と出力を「結びつけるもの」とする考え方もあるのですよ.

どこのエラーか

エラー処理が,不十分のような.
まずは動くようにしたい,という気持ちもわかりますが,不正な入力に対処するというだけでなく,論理エラーの原因を絞り込みやすくする,という点からも,エラー処理は,早い段階から取り入れてください.
ところで,コードの何行目で不具合が起こったかを知る方法を,知っていますか?
「__LINE__」という定数があります.これは,ソースファイルでそれを書いた行番号に置き換えられます.
CでもPHPでもRubyでも使えます.まあ試してください.
Cで,実行時に異常終了が起こる,でもデバッガの使い方を覚えるには抵抗がある,というのなら,随所にprintfを入れて,通過ポイントを確認していく手法を,とらざるをえませんかね….

準備で書くこと

卒論の「準備」の章では,出典を見つけて引き写すだけで終わってはいけません.
対象をできるだけ客観的に記述したのち,そのどんな要素を,自分の研究に使うのか,示すようにしてください.

参考文献にWikipedia禁止

参考文献でWikipediaのエントリを挙げてはいけません.
百科事典を引用してはいけないのです.
百科事典は,定評のある情報源を見つけるための「入口」として,使いましょう.
引用とは違いますが,自分の使用した語句が,妥当である(誤解されない)ことを確認するのにも,有用です.

*1:日本人が誤りやすい英語 (2) 英語の「数」

*2:まれですが,複数形の所有格にするのがいいときも,あるかもしれません.