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私がTeXを使い続ける1個+6個の理由

私は,研究の論文にせよ,授業資料にせよ,ときにはWordで,ときにはTeXで作成しています.
今いるところの研究室では,1期生の学生からWordを使っています.たまに編入生で,高専の卒論がTeXだったという人がいますが,どうやらこちらに来ると,卒論・修論はWordになっているようです.

ともあれ,今日は私がTeXを使い続ける理由を書いてみようと思います.「私がWordを使うのを辞めた理由」ではありませんが,Wordを過小評価している記述もあろうかと思います.事実誤認については,訂正したいと思いますので,ご批評たまわりたく存じます.

一生の特技と趣味

TeXの様々な機能は楽しいし,実用的なものがたくさん作れます.
Wordとの比較として一例を挙げてみると,「さしあたり不要だけど,あとで表示を復活させたいかも」という文言があったとき,TeXなら,表示させないところの手前に「%」を,最後のところに改行を入れて,コメント扱いすればおしまいです.改行したくないときなどでは,

\def\noprint#1{}

と定義しておき,本文では「あいうえお\noprint{かきくけこ}...わをん」としています.どこを“出力しない扱い”にしていたか,探すのは,テキストエディタの編集機能で楽々です.
TeXでは,プログラミング感覚で文章を作成できます.そして,きめ細かい統一的な組版の指示ができます.
まったくの主観ですが,WordとTeXとで,使用時間と身につく技能は,こんなグラフのようになると考えています.

ただし,人に応じて係数がかかります.両者を使って何年たっても,Wordのほうが使いやすいよという人は,Wordの技能に対しては大きく,TeXには小さな係数がかかっているのでしょう.
これもまったくの主観ですが,Wordで学ぶことは途中で頭打ちし,TeXで学ぶことは,世界に目を向ければいくらでもあります.前者の曲線は上に凸(で右上がり),後者は下に凸(同)です.この主観(というか仮説)が正しければ,短期間で小綺麗な文章を作成するにはWord,あれこれ手直ししながら内容も体裁も整えるにはTeX,という棲み分けが成立しそうな気がします.
残りの理由は手短にします.

PDF生成まで無料

platextexからdviに変換し,dvipdfmxでpdfファイルを生成しています.

統一感

章や節の見出し,図表の番号とキャプション,参考文献などなど,TeXでは,簡単な指示で統一的な見た目を作ることができます.意図的に崩すこともできます.
Wordにスタイルというのがあるそうですが,大学人でそれを意識している人はまず見かけません.一人がそれを強烈に意識して,文章を作ったとしても,それを引き継いだ(その文章をもとに「今年版」を作った)人はたいてい,意識が欠けてしまって,残念な印字結果となります.
企業の方では,その辺ノウハウがあるのでしょうか.

過去の資産がある

研究にせよ授業にせよ,科研費の申請*1にせよ,過去に作ったTeXファイルがあって,ときには文章を,ときにはプリアンブルのマクロ定義をコピーして,今作りたいファイルに取り入れています.
Wordファイルをコピペしたくて,内容を見直したとき,これどんな設定にしたっけと思い出せないことがよくあります.

研究内容を洗練させる手段

研究室内の活動では,自分や学生が,中間報告をWordでちゃちゃっと作ります.学生は,修論・卒論や学会発表の原稿を,Wordで時間をかけて作ります.
そういった別々の成果を論文誌に投稿するとき,全体を取りまとめるのに有用なのは,WordではなくTeXなのです.

WordとPowerPointは別物

WordとPowerPointを同時に起動して,メニューのところを見てみますと,なんて違うんだと思わずにはいられません.

論文別刷り費用が安い学会とおつきあいがある

電子情報通信学会和文論文誌 情報・システムソサエティというところでは,次のように,Word入稿はTeX入稿のおおよそ5割増とのこと.

参考:標準ページ数(8ページ)執筆した場合の掲載別刷代【別刷50部】
本会提供LaTeXスタイルファイルによる原稿の場合:88,410円
上記以外(MS-WORDなど)で作成された原稿の場合:133,140円

http://www.ieice.org/jpn/shiori/iss_6-10.html

他におつきあいのある学会は,情報処理学会と情報知識学会ですが,これらはいずれも,TeXとWordとで価格差を設けていないようです*2

*1:科研費以外の研究費の申請で,TeXのスタイルファイルを提供しているのを見たことは,ないですね….

*2:情報処理学会については,例えばhttp://www.ipsj.or.jp/08editt/journal/shippitsu/ronbunJ-prms.pdf

*3:これは「私がTeXを使い続ける理由」ではありません.「私がTeXを使い続ける理由を文章にしてみた理由」ではありますが.