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論文を読もう,引用しよう

研究室で,卒業論文修士論文を書いているみなさんへ.
ある文献の参考文献に書いてあるからといって,それを自分の卒論・修論の参考文献にそっくりそのまま入れては,いけません.「孫引き」といい,研究者がしてはいけない行為の一つです.Web上で時折,「孫引きですが」と書かれているものもありますが(私もそう書いたことがありますが),あれは良くないことを分かっていてそう書いているのです.
参考文献に入れる文献は,見つけて,1回読んでおきましょう.Webから入手した,WordファイルだとかPDFファイルだとかは,保存しておきましょう.
さて,読んだら,自分の卒論・修論の参考文献に入れていいかというと,ダメです.より良い文献がないか,探してください.
読んだ文献の著者で検索すると,その後の報告や,内容を整理した論文が,見つかるかもしれません.
なお,研究室内の卒論・修論では,英語文献(国際会議予稿)を積極的に引用する必要はありません*1.日本語の論文で,差し支えありません.
ただし,知っておいてほしいのは,「広義の論文」と「狭義の論文」です.狭義の論文とは,査読付きの学術論文のことです.広義の論文とは,学会で発表されたあらゆる文献を対象とし,査読付きの学術論文はもちろん,研究会やシンポジウム,国際会議などの予稿集に掲載されているものを含みます.ただ,世の中では「広義の論文」と「狭義の論文」という言い方をしません.私も普段は,「研究会とかよりは,学術論文を引用したほうがいいね」といった表現をとっています.学術論文は,査読というフィルタを通っているため内容の信頼性が高いことに加えて,学会がきちんと管理をしているので,5年,10年,20年前のものでも入手しやすいという利点があります.以下,「広義の論文」を「文献」,「狭義の論文」を「学術論文」と表記します.

卒論・修論では,特別な理由がない限り,同一著者の文献((2つの文献で「著者が完全に一致している」ものではなく「共通した著者が1人以上いる」ものを指します.))は,1つだけ選んで,参考文献に入れるようにしてください.芋づる式に多数の文献を見つけ,それらをすべて参考文献に入れると,発表会当日の回覧で,「よく調査したな」と感じる先生もいれば((私が回覧する記憶で言うと,卒論でも修論でも,参考文献が2ページ以上だと,「おっ?」と感じています.)),「狭い範囲しか調査していないのかな」と否定的にとらえる先生も,いるかもしれません.

そこで次に,どの文献を選んで参考文献に入れればいいのかという疑問が出てきます.基本は,想像できると思いますが,「学術論文を優先」「より新しい文献を優先」です.
同一著者で,より古い研究会発表(予稿)と,より新しい学術論文があれば,これは悩む必要はありません.より新しい学術論文だけを,参考文献に入れます.
では,同一著者で,より古い学術論文と,より新しい研究会発表があるときは,どうしましょうか? これは,記載内容と,2つの文献のタイムラグ次第です.タイムラグが小さければ,学術論文のほうがいいでしょう.かなり空いていれば,両方を参考文献に入れるのが良さそうです.
このケースのほか,どうしても同一著者で複数の文献を参考文献に入れたいときは,本文では別々の文(連続していてもかまいません)で引用し,それぞれに対して,説明をするようにしましょう.
例外として,自分の卒論・修論で取り上げたい概念もしくはキーワードが,より古い文献にしか出現していなければ,それを引用することになります.
同一著者の文献が2つではなくもっとあるときは,どうしましょうか? その場合は,本文の引用したいところで,その著者ら(グループ)がどんなアプローチで何をしてきたかをまず簡潔に説明し,それから重要な文献(おそらくは学術論文)を引用することをおすすめします.
引用は,「[番号]」の形式です.上付きではなく,カッコ書きと同様に表記します.必ずASCII文字(いわゆる半角文字)を使います.キーワードの直後や句読点の直前*2に置き,カッコ書きと同様の効果を与えるのが基本ですが,「[3]では」のように,名詞として使用しても,研究室内の卒論・修論においては,差し支えありません.分野・学会によっては「人名[番号]」という書き方をするだとか,カッコ書き引用と名詞化とで表記を分ける*3だとかいうのもありますが,今回はそこまでの配慮は不要です.
関連:

*1:RFCやISOなんかの仕様・規格を,参考文献に載せることは,まあありますかね.

*2:句読点の直後に置くのは,その直後の文などの通し番号と誤解されると良くないので,推奨できません.

*3:情報処理学会の論文誌では,たしか,カッコ書きは上付きにします.TeXでは\citeと\Citeで区別していたはずです.