わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

譲歩で「例え」

「ホメオパシー」についての会長談話という文書が出ています.内容については全面的に賛同します*1
表記についても,慎重に練られ,十分な推敲の結果,リリースされたのがうかがえます.数字について,全角と半角が混在しているのは,おそらく「2桁までは全角」のルールなのでしょう.
…と思ったら,1点,気になる表記が見つかりました.『例えプラセボとしても』です.
譲歩表現の「たとえ」を「例え」と書く誤用については,漫画のセリフでときどき見かけますが,日本学術会議の会長談話の中で登場するとなると,もはや誤用ではなく十分に市民権を得たのかなとも感じます.
念のため,広辞苑第六版(2008年1月11日 第六版第一刷発行)で確認したところ(pp.1744-1745),この意味の「たとえ」の漢字表記は【縦え・仮令・縦令】で,解説には「タトイの転」とあるので「たとい」を見てみると,【縦い・仮令・縦令】でした.その前後には「たとい【譬・喩】」「たとう【譬ふ・喩ふ】」「たとえば【例えば】」「たとえる【譬える・喩える】」「たとゆ【譬ゆ・喩ゆ】」もありましたが,漢字から,別グループと分かります*2
手軽に引けるオンラインの辞書と言えば,goo辞書ですが,ここのたとえの検索結果 - goo国語辞書でも,譲歩の「たとえ」を「例え」と書くことはありません.
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?index=11558300&p=%B2%BE%CE%E1&dname=0na&dtype=0&stype=1&pagenum=1というのを見つけました.仮令と書いて「たとえば」の意味にも「たとい・かりに」の意味にもなるとのことですが,「およそ」「たまたま・さいわい」などの意味もついて,使い方が拡大されている妙な語のように思えます.
辞書を引き,語源を少々考えてみると,譲歩の意味で「例え」と書くのは,やはり違和感があります.市民権を得ていないかどうかについては,辞書だけ見ても分かりませんので,留保したいと思います.
国語に関する世論調査で取り上げてくれると,いいのですが,wikipedia:国語に関する世論調査の調査概要を見る限り,ある言葉をかなで書くか漢字で書くかという調査は,なさそうですね….

*1:ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性があることが大きな問題であり』は,工学上の問題解決においても配慮すべきことだと思います.

*2:「たとえば」以外の語句で,見出し語にも解説にも「例」という漢字は出現していません.しかし他の辞書では「たとえる」の中に「例える」という漢字表記がありましたし,小学校で習う漢字一覧でも目にすることができます(「たと(える)」という読みを,四年生で習うかどうかは分かりませんが).なので「広辞苑に見出し語として出現しないので,日本語として間違い」という立場はとらないことにします.