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10年間の研究室活動を振り返る

2000年ごろからの10年間の研究室活動を,見直してみました.

研究課題の見つけ方

2002年度までは,教授+助手(私)+技官という構成だったこともあり,基本的に教授が外から見つけてきたトピックを,学生に割り振り,自分はそれを集約して論文にするという流れでした.教授を介さないテーマは,せいぜい毎年度,学生1人の卒業研究になっていた程度でした*1
2003年度からは,教授+助手(私)+助手という構成に変わりました.ということで,教授が外から取ってきた仕事が,おおよそ50:50の割合で2人の教員に下ってきました.そういう構成になった半年後に,講師になりましたが,研究についてはあまり変化がありませんでした.
2006年度の3年次配属で,講師以上は研究室を運営するというルールになり,その翌年度以降の卒業研究は,自分で面倒を見ることになりました*2.研究課題については,共同研究や,他大学の先生からの依頼をこなしていく中で,考えていきました.また,特定のデータに依存する研究ばかりというのも良くないので,そうでない研究テーマを考え,主に英語で成果を発表する機会を得ました.

10年であまり変わらなかったこと

「Webアプリケーションの構築」と「Word/Excel/PowerPointの使用」を挙げたいと思います.
Webアプリケーションは,「開発側は文字列(HTML)生成」「動作確認と利用は,ブラウザだけがあればいい*3」といった特長があります.サーバサイドのソフトウェアはあれこれ変化しましたし,HTMLの仕様についても注意を払うところはありますが,システム構築の大枠は,10年間であまり変わっていません.
文章執筆はWord,数表はExcel,プレゼンはパワポ.バージョンは変われど,これらの活用は不可欠です.OOoや激安オフィススイートも試しましたが,代替には至りません.Microsoft社提供のこの御三家は,まだまだ使っていくことになりそうです.

10年間でずいぶんと変わったこと

学生との関わりとしては,「さまざまなストレージ」「研究指導と発表指導」「文献調査はWebから」,また自分のことでは「図の作成」「事例集としてのブログ」を挙げることができます.
ストレージとは,広い意味でデータを溜めておくところとお考えください.自分の研究室では,大きく分けて2種類のストレージがあります.アプリケーションで使用されるコンテンツの格納と,ソースファイルや論文といった研究成果の保存です.
コンテンツの格納先は,基本的にはDBMSですが,PostgreSQLMySQLも,10年間のたび重なるバージョンアップのおかげで,商用DBMSが不要な水準になりました.DBMSで管理するほどでないデータについて,昔からファイルベースでの管理を行うこともありましたが,あるアプリケーションではRubyのPStoreを使ってみたりしました.dbmも,その名称は知っていましたが,近年,分散型KVSを理解する際に前提となるデータ構造と知り,自分の研究に取り入れられないかと考えているところです.
成果物の保存ですが,2000年代前半は,Linuxサーバを1台設置し,sftpコマンド*4WinSCPでやりとりしていました.その後,SubversionTortoiseSVNのおかげで,単純なファイル管理だけでなく,学生とのデータ共有も,より効率的になりました.そういえば,Subversion全文検索エンジンを「研究支援」だけでなく「研究(問題解決)の手段」として使用し,学会発表するようになったのも,自分で研究室を運営するようになってからでした.
研究指導は後回しにして,発表指導について.2000年に大学院ができたとき,修士学生のノルマとして,セメスターごとに1回の研究発表,年度ごとに1回の学会発表が課されました.それ以外はなく,初めのうちは,研究者がゴールのない過程をさまようことを,学生にもさせていたように感じます.
2008年度から始まった,研究グループの小ゼミが,発表指導の仕方を大きく変更させ,研究そのものも安定化するようになりました.実施していることは,スタンダードなゼミ発表と質疑です.議事録をとることは,特色として挙げていいかもしれません.小ゼミのおかげで,半期に何をすべきか,学生と意識の共有がしやすくなりました.大ゼミ・小ゼミ発表直後は,研究する気が少々抜けてしまいがちなのが,欠点でしょうか.
そして研究指導は,ゼミ発表・学外発表と,修論・卒研の取りまとめのために,個々に何をすればよいか,立てた予定がうまくいっているかを確認する場となりました.テーマごとに原則隔週でミーティングを実施し,議事録をとらせます.私が研究成果を報告をすることもあります.毎回,各学生に「次回までの課題」を出します.ときには私自身にも「次回までの課題」を設けることがあります*5
文献調査はWebから…というのは読んで字のごとし.使ったことがない学生には,CiNiiとGoogle Scholarを紹介しています.ただしそれらはいずれも,テーマ名だけをもとに探すというよりは,書誌情報を持っていて,そのオンライン版があるかどうか探すのに使うべきでしょう.またWikipediaは,分野の調査の入口として有用です.
自分の研究で,図を作成する方法を振り返ります.90年代,研究というよりは趣味として,テキストエディタでEPS形式の画像を書くことを経験していて,2000年になっていくつかの論文の図は,EPSで手書きにしたり,TeXのpicture環境で作成していたものでした.現在は,論文をTeXで書く場合には,Inkscapeで描いてEPSで保存しています.Wordの場合は,PowerPointで図を描いて,コピー・ペーストでWord上に乗せています.普通の意味のグラフならR,情報分野のグラフならGraphvizを使うことを考えます.いずれも,出来上がった画像ファイルや,それを作るためのデータあるいはスクリプトファイルは,論文などと同じディレクトリか,その中に「fig」ディレクトリを作って,保存しています.
最後に,事例集としてのブログについて.そのメリットは,本日の内容に関連するエントリを列挙することで,表したいと思います.

*1:初期にはセキュリティをテーマにした卒研がありました.それと,地域共同研究センター(当時)関連の教員データ管理を卒研にしたのも思い出します.

*2:修士論文の研究指導ですが,2008年度は形式的には教授の下の学生を私が指導し,2009年度は私の下の学生の指導の大部分をある先生にお願いしたといった関係があります.今のM1・M2は,卒業研究と同様に,私が指導しています.

*3:本当は他にも,サーバや,インターネット接続可能な環境というのも必要ですが.

*4:SSHでなければ,ncftpコマンドを利用していた時期がありました.今はlftpです.

*5:そして原則としてその日のうちに解決し,関係する学生にメールを送ります.あ,某マシンに学生がログインできるようにする件,放置してたなあ….