食卓にて.
「今日わは…」
「出たねあなたの『きょうわは』.どしたん」
「思い立ってやなあ.学科の学習内容を,教員だけで決めてええもんかと.いろんな科目を学んできた学生の意見を聞こかいなと思ってやな…アンケートをすることにしたんや」
「ふん」
「聞き取りやのおて,紙に書かすことにしてん.ていうかWordな.質問は自由記述で2問だけにして,A4の1ページで書かせるんや」
「何聞くん?」
「知りたいのは,俺もいくつか関わっている,プログラミングの科目やねんな.学生の目ぇから見て,うまいこといってるんかが知りたいんやが」
「授業のことを聞くん?」
「いや,どっちかっちゅうと,複数の科目の連携やな.1年後期に同時開催の科目とか,1年後期と2年前期とか」
「ふうん」
「特定の科目のことを尋ねて,こき下ろすような回答が来るのもええことないし」
「まあなあ」
「ってことで,科目単体というよりはどっちかっちゅうと,カリキュラムに関心があるんやが,まあ学生に,今のカリキュラム,ええかあかんかって突きつけるのも,ええことないんで,少々漠然とした質問文にして,あなたの経験をもとに,回答してくださいってして,昼間にばあっと送ったんや」
「あ,もう送ったの!」
「せやねん.研究室の学生は11人.さっきも言うたように,質問は自由記述で2問なんやけど,ちょっと思いついて,1問目はみな別にしてみてな.12個作って,最後の最後に一つ削るんに,苦労したで」
「どんなん返ってくるんやろね」
「ま,すぐではないよ.別て言うたけど,ある程度は重なりを持たせてるし,2問目は共通にしてやな,えっと『学科の教育をよくする提案を自由にしてください』やったかな」
「あなたから,回答しなさいって指示したら,みんなちゃんと答える?」
「いやそこでやな.提出するとかせんとか,したとしてその内容は,ゼミなんかの成績に影響せえへんって,注意書きを入れてみてん」
「そうなん!? 成績に入れるって書いたほうがよかったんとちゃうの?」
「いや,あえて自主性を促してみようと思たんや」
「真面目な学生やからね」
「これから就活っちゅう学生には,エントリーシートを書く練習にでもしてくれるとええんやが…まあある種,バクチやな.吉と出るか凶と出るか」
(イスから立ち上がって後ろ向いてエアコンに向かって手を叩く)
「何や何や」
「拝んでるみたいやね」
「俺らの会話が長かったから,飽きたんか? あたしも見てほしいってか」
「いやたぶんね,『吉』『凶』言うたんで,神社のおみくじを思い出したんやないかな」