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余りのある等分除・再考

とい5『りんごが 14こ あります。5さらに おなじに なるよう りんごを のせます。1さらに りんごは 何こ あるでしょう。』

包含除と等分除 - わさっき

について,「14÷5=2あまり4」という式を書きました.
単位を付けると,「14個÷5枚=2個/枚あまり4個」です.
これを,「(被除数)=(除数)×(商)+(余り)」*1の形でかけ算形式にすると,「14個=5枚×2個/枚+4個」となります.
そうすると,「5枚×2個/枚」と書くことになります.「2個/枚×5枚」とすべきなのではないでしょうか?
…と,悩む必要はありません.「かけ算指導の出発点は『何のいくつ分』」「交換法則利用可」「単位は無頓着」を前提とするならば.
まず,交換法則の適用について,確認しておくと,「5枚×2個/枚=2個/枚×5枚」なので,「14個=5枚×2個/枚+4個」を「14個=2個/枚×5枚+4個」に変換できます.単位付きの式の計算規則については,小学校で使用する範囲で考えるなら,それほど難しくありません.また,式の一部(部分式)のみを等価な別の式に取り替えるというのは,項書換え系(Term Rewriting System, TRS)を使って表現することができます.
ここで,冒頭のとい5を出発点として,乗算形式で得られる式を並べ,(本エントリ限定の)ラベルを振ることにします.

  • 《かけ算A》14個=5枚×2個/枚+4個
  • 《かけ算B》14個=2個/枚×5枚+4個
  • 《かけ算a》14=5×2+4
  • 《かけ算b》14=2×5+4

これらのうち,*2小学校の算数ではどれで書くのがよいのか,我々大人はどうすべきか,というのを検討してみます.
小学校限定としては,式には単位を付けないのが当たり前なので,《かけ算A》《かけ算B》ともに,よろしくありません.また「14÷5=2あまり4」を「(被除数)=(除数)×(商)+(余り)」に当てはめるのですから,「14=5×2+4」,すなわち《かけ算a》しかないだろう,となります.
次は大人です.式に単位を書いていいとすると,《かけ算A》,《かけ算B》それぞれについて,そう書くことに意義があり,その反面,それぞれに対して注意点もあります.
まず,《かけ算A》は,最初に示したロジックのとおり,「14÷5=2あまり4」のそれぞれの数に単位を明示した上で,「(被除数)=(除数)×(商)+(余り)」によって書き直したものです.このとき,除数と余りの単位を抜いた上で*3,大小比較ができ,(単位なしの)余りは,0以上でかつ,(単位なしの)除数未満でないといけません.実際この式では,4<5すなわち余り<除数となっていて,この点で問題はありません.例えば,「14個=5枚×1個/枚+9個」という式は許されません.
その一方で,《かけ算B》についてはこれを変形して「14個=1個/枚×5枚+9個」とできます.この式になるような説明文を与えると,こんな感じでしょうか:「親が14個のりんごを持っていて,5人の子どもにみな同じ数になるよう,あげることにします.りんごは袋に入っていて,子どもには(いくつあるのかが)見えません.5個取り出して1個ずつあげれば(皿に乗せれば),14個=1個/枚×5枚+9個となります.このとき袋には9個のりんごが残っています」.
話の進め方として,《かけ算B》は,《かけ算A》と(単位付き数量に関するかけ算の)交換法則を適用して作りました.ですが実は,そんなことをしなくても,そもそもわり算を使うことなく,かけ算とたし算の組み合わせで立式できてしまうのでした*4
するとどうなるかというと,《かけ算B》に出てくる,「2個/枚」と「4個」,「5枚」と「4個」,そしてそれぞれから単位を取り除いた「2」と「4」,「5」と「4」の大小を比較することに,意味がありません.もちろん「2<4」「5>4」ですが,「それが何? (So what?)」です.
まとめとして,4つの式の根拠と使いどころを整理します.

  • 《かけ算A》14個=5枚×2個/枚+4個:商と剰余の関係に基づき,かつ単位付きの式です.「5>4」により,余りが除数より小さい(ので,商と剰余の関係式が持つ必要条件の一つを満たしている)ことが分かります.
  • 《かけ算B》14個=2個/枚×5枚+4個:乗算と加算を用いた,単位付きの立式です.「14個=1個/枚×5枚+9個」としても,差し支えありません.
  • 《かけ算a》14=5×2+4:とい5を基点とするとき,もっとも自然な,商と剰余の関係式です.ただし「『5枚×2個/枚』になるが,いいのか? 『2個/枚×5枚』とすべきじゃないのか?」というツッコミをしたくなる人がいるかもしれません.
  • 《かけ算b》14=2×5+4:一切,使い道がありません.前々から検討してきた《問い》に対して,「5×3=15」という式を立てるようなものです.

*1:式に単位を書かせるべきか(4) - わさっき 脚注*2.

*2:そうだ,ここに「僭越ながら」という言葉を入れておかねば.

*3:ここが無頓着派の真骨頂!

*4:《かけ算A》については,0<余り<除数という関係が不可欠なので,わり算と切り離すことができません.