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「×」から学んだこと 13.04―用語

Q: このQ&Aを通じて出現する《りんごの問題》とは何ですか?

「さらが 5まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。」を言います.この問題文は,次の画像によります(私は2010年11月に初めて見ました).

Q: 「積」と「答え」は,同じものですか?

A: ケースバイケースです.「3×5」というかけ算の式で考えるときは,15は積ですし,答えとも言います.ですが《りんごの問題》のように文章題だと,正解となる答えは「15こ」になり,「積は15個」とは言いません.
数学教育学の論文や教師向けの書籍では,「倍(multiple)」と相対する概念として「積(product)」という言葉を使うこともあります.
「被乗数」は「かけられる数」,「乗数」は「かける数」,「乗法」は「かけ算」とそれぞれ同じです.

Q: 「1あたり」って何ですか?

A: かけ算・わり算の学習に関して,数学教育協議会(数教協)が提唱・活用している用語です.
分離量だと「1あたりの数」,連続量だと「1あたり量」と呼ばれ,かけられる数になるのが通例です.かける数に来るほうは,「いくつ分」または「いくら分」などと書かれます.「内包量×外延量」と書かれることもあります.
《りんごの問題》だと,1あたりの数は「1さらに りんごが 3こずつ」のところで,これを「3こ/さら」と書くことができます.「こ/さら」は,速度のkm/hと同様に,一つの単位となります.当ブログでは過去に「パー書き」と書いていました.

Q: 「分離量」「連続量」って何? これも数学教育協議会の言葉?

A: いえ,確かに数学教育協議会(数教協)の出版物でよく見かけまして,学習指導要領やその解説には出てきませんが,数教協由来ではなさそうです.
分離量の典型的な例には「3個」「5枚」,連続量だと「3cm」「5kg」などがあります.
数が小数・分数にならないものを分離量,小数・分数になってもいいものを連続量,と認識するのでもOKです.
分離量は「最小単位の決まっている量」,連続量は「最小単位の決まっていない量」という定義もあります.

Q: 「こ/さら」が,速度のkm/hと同じ?

A: 遠山が提唱した助数詞廃止論を踏まえての質問でしょうか.その場合,「3人」と書いたときの人は助数詞ですが,単位量当たりの大きさで学ぶ,「1m^2あたり3人」や「1人あたり3m^2」といった量を,どのように式の中で表せばいいのでしょうか.「人/m^2」「m^2/人」よりも良い,単位の表記や量の扱いは,ありますでしょうか.
小学校の算数で出てくる単位は,大人から見れば物理単位と助数詞に分けることができるとしても,ことさら区別をしないほうが良いように思います.
なお,「単位量当たりの大きさ」は学習指導要領で,また「単位量」「一人当たりの面積」などは同解説で,書かれています.5年で学習します.パー書きの量は数教協由来で,2年のかけ算で指導するものとなっています.

Q: 「一つ分の大きさ」「いくつ分」という言葉を,みんな使っているのですか?

A: いえ,当ブログでのスタンスのようなものです.この言葉は,学習指導要領解説にある「乗法は,一つ分の大きさが決まっているときに,その幾つ分かに当たる大きさを求める場合に用いられる。」に由来します.
「一つ分の大きさ」は,多くの教科書で「1つ分の数」と書かれています.また「一つ分」「1つ分」と書かれることもあります.
パー書きでなければ,「一つ分の大きさ×いくつ分」は「1あたりの数×いくつ分」と同じとみなして差し支えありません.

Q: 「かけ算の順序」という考え方は,小学校で普及しているのでしょうか?

A: 調査すると面白いのですが,そんな調査,見たことありませんね.
小学校のかけ算で「順序」というと,結合法則((2×3)×4=2×(3×4))や乗除先行(3+2×3≠(3+2)×3)と関連する「計算の順序」という意味のほか,九九をどの段から学習するかといった話でもよく「順序」が使われています.
文章題を対象とした「かけ算の順序」の論争は,それらの指導を排除または軽視しているという点でも,まずいなあと思っています.

Q: かけ算で「サンドイッチ」というのを聞いたことがあるのですが,これって何ですか?

A: はい,《りんごの問題》で正解とされる式「3×5=15」に対し,それぞれの数に単位を付けると,「3こ×5まい=15こ」となります.
「被乗数に乗数が作用して,答えとなる数量を得る」という立場で見るとき,「5まい」が「5倍」と解釈され,「3この5倍は15こ」となります.そして,かけられる数と答え(積)の単位は同じです.
これを,式の確かめに活用しているのが,サンドイッチの考え方です.

Q: 「立式」って何?

A: 「式を立てること」「式に表すこと」です.
小学校学習指導要領解説 算数編では,p.128が最初の出現で,他にも何度か出現します.いずれにも定義がついていないので,教師は知っていて当然なのかもしれません.
算数教育指導用語辞典』の索引には,見つかりませんでした.

Q: 「かけられる数とかける数」ですか? 「かける数とかけられる数」ですか?

A: これまで読んできた記憶で言うと,「かけられる数とかける数」も「かける数とかけられる数」も「被乗数と乗数」も「乗数と被乗数」も見られ,どれが極端に多い/少ないというのは,ありませんでした.
私自身は,記事ごとに一貫するようにし,引用時には原文を尊重するよう努めています.

Q: かけ算の「順序」ですか? 「順番」ですか?

A: Web上の情報で,「順番」から「順序」へ変更していった事例が見られます.ともあれ現在も,語句には揺らぎがあるように思います.
Ruby正規表現は,次のようになります.

/((かけ算)|(掛け?算)|(乗法))(の(式の)?)?順[序番]/