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最も頭が良くなるのは,どれくらいのスピードで走った時ですか

通し読みをしたのですが,内容で面白かったのは,最後の章ばかりです.本日,2つのエントリに分けて取り上げます.一番は,次の箇所です.

運動と脳機能との関係をテーマにした講演会では、受講者の方から「最も頭が良くなるのは、どれくらいのスピードで走った時ですか」という質問を受けることが少なくありません。しかし、残念ながらこれに対する答えはないのです。
「どなたにとっても時速10キロで走るのが頭を最も良くする」などと言えれば私も気持ちがいいのですが、そんな速度はあるはずはないのです。そもそも一人ひとりの心臓血管機能は様々です。ある人にはベストの速度でも、運動能力が異なる別の人にはベストとはいえないはずです。また、同じ人であっても、トレーニングによって心肺機能が高まれば、それに応じて最適な運動強度も確実に高まります。つまり、最適な運動強度をスピードでコントロールするという発想自体が根本的に間違っているのです。
(p.195)

本では受験生対策にページをとっています.2例,抜き出します.

実際、私のクリニックを受診した受験生には、心電図検査を行い心臓などの循環器に異常がないことを確認した上で、最高心拍数の80%となるランニングをすすめています。
(p.197)

記録されていたデータを分析したところ、この受験生は普通に歩いているだけで、最大心拍数の80%になっていました。つまり、彼にとっては歩くというのが最適な運動強度だったのです。
(pp.200-201)

そして,「最適な運動強度をスピードでコントロールするという発想自体が根本的に間違っているのです」は,より広い範囲に適用可能な教訓であるように思います.
教育としては,こうです.「これを解け」「これを,間違えることなく解ける(無意識のうちにできる)ようになるまで習熟せよ」といった,課題ありきではなく,解決者の能力に応じ(変化,たいていの場合は向上,にも配慮して),課題を設定し変更していくことが求められているわけです.
課題の設定については,かつて書いたうち次のエントリと関連します.

課題の見直しや変更について,まさにぴったりというのが思い浮かばなかったのですが,次のエントリを挙げておきます.一つの大きめの課題(受験生にとって「大学合格」に相当するもの)に対して,支援となるよう「考えるべきこと」を細分化し,時にはとっかえひっかえしながら,達成してもらうという話です.