いきなりですが問題です.
○○くん,紅海は,なぜこんなに,きれいなのでしょう?
大学院生が研究発表をする,某ゼミでのことでした.年度が始まってすぐに,発表できる学生というのもいませんので,先週・今週・来週は,教員が研究紹介をします.今週は3人の先生方で,はじめの2人は,今年度,クラスタ移動でやって来ました.
本学大学院への進学を少しでも考えている学生のために,ここで「クラスタ」をはじめとする大学院の運営について,書いておくことにします.
大学院の前に,学部・学科があります.我々の学部は5つの学科があり,学生受け入れ年度は少し違えど,学科の改組はこれまでしていません.それに対し大学院は,システム工学研究科・システム工学専攻という「1研究科1専攻」で,そこに毎年100人以上の学生がマスターコース(博士前期課程)に入学します.
100人をいっぺんに見る授業だとか,ゼミだとかは,とても運営できません*1.そこで,専攻内で数個のグループに分かれ,それぞれでゼミや,修士論文発表会,そして入学試験(院試)を行います.このグループを「クラスタ」と呼んでいます.私は,コミュニケーション科学クラスタに所属しています.
学科を変える場合には,学則の改正が必要になりますが,クラスタを変えるのは,そういった慎重な審議や煩雑な手続きは必要としません.というか,大学院教育や研究の連携そして流動性を高めるため,意図的にそのようにしている,と聞いたことがあります.
とはいっても,「今日までは□□クラスタ,明日からは△△クラスタ,で来週は…」なんて,ころころ変えるわけにはいきません.「院試」と書きましたが,学生が出願をするにあたり,大学院の募集要項には,クラスタ名やその紹介,所属教員の氏名が明記されています.なので,年度単位で変わるかも,と思うのがいいでしょう.
ちなみに,「どのクラスタに出願したらいいの?」の答えは,指導教員が所属するクラスタです.毎年のように,クラスタ名を間違えて,受験生も,面接する教員も戸惑う事例が出ています*2.
さて,冒頭の問題なのですが,これは,3人のご発表者のうち最初に研究紹介をされた教授が,なじみの,教授ではない女性教員を指名して,問いかけたのでした.「くん」付けも,実際そうなのでした.いわば先生・生徒の関係を示しているわけですが,もちろんそのときの話しぶりに加えて,問う先生・問われる先生が同じ学科ということもあり,まあそういう聞き方をしても,トラブルは生じないだろうと判断されての質問だったと思います.
答えは,「河川の流入がないため」です.wikipedia:紅海にも,説明があります.理屈はどうでもいい,ビジュアルがほしいというのでしたら,【ヨルダン】アカバ(紅海)の海はキレイです。。。 ( 中東 ) - OSO♪の旅行ブログ倉庫。。。 - Yahoo!ブログはいかがでしょうか.
2番目の先生(この方も教授)は,穏やかに滑らかにお話しされているなあと思いながら聞いていると,なんと,こちらに刃が向けられました.
「先生,日本の食料自給率はどのくらいか,ご存知ですか?」
ひぃ…記憶を総動員して,「えっと,半分もいかなかったような」と答えました.すると教授は,「そうです.カロリーベースでは,40%ほどです.ですが家畜のエサ,飼料はというと…」と,自給率のより低い対象に,話を進めていきました.
記録を振り返ってみると,当雑記では過去に,黒木メイサの食料自給率について書いています.YouTube動画にはアクセスできません.wikipedia:食料自給率,食料自給率とは:農林水産省も,読み直しておきたいところですね.
そんなこんなで,今年度の某ゼミは,変わったなあという印象を持ちました.教員の研究紹介の際,聴講者から質問をする時間をとらなくなりました.その一方で,発表する先生の側から,聞く側へ質問をし*3,正解にせよ間違いにせよ,答えられなかったにせよ,ご発表に取り入れているのです.
最初の教授は,国内外でフィールドワークということで,各地の自然をふんだんに取り入れながら,抑揚をつけた話し方により,“訴求力のあるトーク”をなさっていました.2番目の教授は,近刊紹介の資料を配布し,“読むプレゼン”を通じて,ひとつのストーリーを構築していました.
3番目の先生は,ご着任からこのクラスタ.そして従来型のご発表です.キーワードは“slideument”でしょうか.スライドを適度に送り,書かれている言葉を説明したりしなかったりで,ほどほどの時間になったので終了していました.
内容のインパクトは,はじめお二人よりも弱かったとはいえ,こういった組み立て方で発表をすればいいのだ,と参考になった学生も,きっと多かっただろうと思います*4.
いやはやしかし,それぞれの発表に優劣をつけることも,ましてや評点をつけるわけにも,いきません.
それでも,お二方の教授の参加というのが,今年度の某ゼミを,活気づけるような予感がするのです.
あっそうそう,この「某ゼミ」に出席している学生は,欠席メール文例を読んどいてください.
(最終更新日時:Wed Apr 25 06:16:35 2012ごろ)
*1:授業は制度上,1専攻でM1・M2の全学生が,受講できます.しかしM2はほぼとりませんし,1コマに複数の大学院科目を入れることで,受講者の分散が図られています.
*2:そういう学生が合格したら,入学後に,クラスタ変更の手続きをします.しかし,その運用では,通りやすいクラスタを受験するという悪用も考えられます.とはいえ実際には,悪用はできません.そもそも,通りやすい/通りにくいクラスタというのがありませんし,おかしな受験は面接時に見抜けます.その上,合否判定のプロセスの中に,クラスタ間でのチェックも入ります.
*3:2番目の先生は,学生にも一つ,質問をなさっていました.自分の研究室の学生なので,よく覚えています.でも何を質問されたかは,忘れました….
*4:教授の発表は,行き先の写真,自著の刊行案内といった,手持ちの情報がどうしても必要になります(このことは,3人の先生方それぞれの,話し手としての人間的な魅力を,無視するものではありません).「これぞプロフェッサー」とでも言いましょうか.そして最後の先生の発表は,大学院に入って新規のテーマで研究に取りかかる学生でも,対象・手法をきちんと選び,こつこつ続けていけば,2年で到達できそうに,見えるのです.「手の届く研究紹介」かな.