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グレーゾーンの子どもに対応した,かけ算の出題

医学と教育との連携で生まれたグレーゾーンの子どもに対応した算数ワーク (初級編2)

医学と教育との連携で生まれたグレーゾーンの子どもに対応した算数ワーク (初級編2)

「グレーゾーンとは,こういう意味だ」というのは,直接的に書かれていませんが,監修のことば(p.5)から,学習障害と読み取れます.学習障害は「読み障害」「書き障害」「算数障害」と分類ができ,その算数障害に立ちむかうべく,本を企画・編集されたとのこと.
監修のことばから知ることのできるキーワードに,「数の固まりの操作」があります.10を,もっとも基本的な数の固まりと位置づけています*1.私は,1〜2年の子どもには10のほか2や5も,数の固まりにできるし,もっと言うとaやxといった文字,また具体物・半具体物も対象にして,何らかの観点で10にこだわることなくグルーピングすることも,大切だと考えますが,ともあれこの本の世界設定に従うとしましょう.
全体をざっと読んでから,かけ算の出題を見ていきました.「かけ算」をタイトルに含むページの最初はp.32です.p.32は,いわゆる「2とび」,p.33は「5とび」で1〜2桁の数を書いていくというものです.問題文は「なぞりましょう。」です.大部分に,薄い数字が書かれていて,なぞればいいのですが,2桁まるごと空いている箇所もあります.念のため解答を…と巻末を見ると,なぜか飛ばされています*2
そのあとは九九で,見開き2ページでひとつの段とし,2の段から9の段まであります.9の段が終わると…「長さ」になってしまいました.長さ,図形のあとは,たし算・ひき算の文章題です.
かけ算の文章題は,p.77にあります.このページの6問は,書き出すことにします.

[1] あめを 一人 4こずつ 6人に くばります。あめは ぜんぶで 何こ いるでしょう。
しき  4×6
こたえ   こ

[2] 3人ずつ のった ボートが 7そう あります。ぜんぶで なん人 のって いるでしょう。
しき   ×
こたえ   人

[3] はこが 8つ あります。この中には チョコレートが 6こずつ はいって います。チョコレートは ぜんぶで なんこ あるでしょう。
しき  6×8
こたえ   こ

[4] ふくろが 9こ あります。この中には りんごが 8こずつ はいって います。りんごは ぜんぶで なんこ あるでしょう。
しき   ×
こたえ   こ

[5] 本を 一日に 6ページずつ 読むのを 一しゅうかん つづけました。ぜんぶで なんページ 読んだでしょう。
しき  6×7
こたえ   ページ

[6] 本を 一日に 4ページずつ 読むのを 一しゅうかん つづけました。ぜんぶで なんページ 読んだでしょう。
しき   ×
こたえ   ページ

原文では,小問番号は箱囲みです.各文章題も,箱で囲まれています.「しき」と「こたえ」の行はそれぞれ,1文字1マスのマス目状になっています.小問番号を除く上記引用は,薄く表示されています.子どもが問題文もなぞって書き,式もなぞるか自分で立てて,答えを求める,という流れです.
奇数番目は,新たな問題なので式の立て方をなぞって学ぶこと,偶数番目はその一つ前と同様にして式を立てることが,それぞれ期待されています.そして[1]と[2]は《AB型》あるいは《被》,[3]と[4]は《BA型》あるいは《乗》です.[5]と[6]は,「一しゅうかん」を「7日」に変換し,かけ算の意味を考えるとかける数になる,といったところでしょうか.
算数障害の子どもであっても,このように問題文を配置し,かけられる数とかける数とを読み取って,かけ算の式にすることを学習させようというわけです.このページを見るまで,ちょっとでもこういうのが困難な子には,九九や(数としての)加減乗除に力を入れ,文章題は別の機会でもいいんじゃないかと思っていたところ,こうして出題するのには,軽く衝撃を覚えました.
とはいえこれらの出題だけで,かけ算の意味,使い所,式の書き方がマスターできる,と言うわけにはいかないでしょう.子どもの学習(算数だけではないわけで)に応じて与える内容そして出題数なのです.pp.77-79の文章題で,かけ算で式を立てるとき,どれにも「ずつ」が書かれており,「ずつ」の直近の数が必ず,かけられる数になっています.

*1:向山洋一氏の名前がp.6に出てきています.そういえばTOSSの出版物といえば明治図書,と連想するようになりました.なお,明治図書ならばTOSS,というわけではなく,最近だとhttp://www.meijitosho.co.jp/eduzine/interview/?id=20120377で,筑波の田中博史氏のインタビューを読むことができます.

*2:p.32には「24」,p.33には「25」という番号がついています.巻末の解答は,この番号でいうと,「1」から「4」まではあるのですがその次が「42」なのです.解答のページ番号は,飛んでいません.