わさっきhb

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「×」から学んだこと 13.04―出題

Q: 何が議論の対象なのか,説明してもらえますか?

A: はい,次の画像をご覧ください.

「さらが 5まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。」という文章題(《りんごの問題》と呼びます)と,「しき」と「こたえ」を書く欄があって,子どもは「しき」に「5×3=15」,「こたえ」に「15こ」と書いたところ,「こたえ」はマル(正解)だけれど,「しき」のほうがバツ(不正解)で,そばに「3×5=15」と赤で書かれました.
この正誤判定から知ることのできる,学校でのかけ算の指導が,議論の対象となっています.

Q: その指導には,賛成ですか,反対ですか?

A: はい,賛成です.かけ算の意味を確かめるための,算数教育ではよく知られたタイプの出題です.

Q: なぜそんな問題が出回っているのでしょうか?

A: 問題文から「一つ分の大きさ」と「いくつ分」を読み取って,かけ算の式にしましょうという意図です.
昭和20年代から現在まで,この種の出題を見ることができます.ある本では,「基準量が後に示された適用問題」と記しています.

Q: トランプ配りを使えば,「一つ分の大きさ」を5,「いくつ分」を3とすることができますけど?

A: 残念ながら,トランプ配りの乗法への適用は,学校では認められていないようです.

トランプ配りの検討は,前回のQ&Aからの進捗の一つなので,新たに[http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130509/1368025200:title=記事]を設けて整理しました.

Q: 交換法則から,「3×5=15」は「5×3=15」と書けませんか?

A: 書ける・書けないで言うと,その2つの等式,さらに「3×5=5×3」は,小学校でも認められています.しかしそこでいう交換法則は,3×5あるいは5×3という式から出発して,得ることのできる関係式です.なお,アレイ図を使った交換法則については,あとで取り上げます.
《りんごの問題》では,かけ算の式がない状態から,式を立てることが期待されているので,適用できません.

Q: 英語では逆順になりませんか?

A: ええ,算数教育に携わっている先生方には,それは周知のことです.その上で,日本式を採用しています.
「たされる数+たす数=和」「ひかれる数−ひく数=差」「かけられる数×かける数=積」「わられる数÷わる数=商」として四則演算を見ると,基準量となるものを,演算記号の左に書くことにすれば,統一がとれ,合理的です.

Q: 長方形に並べて考えれば,どちらでもいいのでは?

A: 批判としてよく見かけますが,直積によるアプローチであり,日本の算数では採用されていません.
もし児童が,《りんごの問題》に対しそのような図を描いたら,「それだと『3こ』『5まい』が分からないよ」と,先生または他の児童が指摘することになりそうです.
直積や,2つの因数によるかけ算の意味づけについては,日本(遠山啓),フランス,中国で問題点が指摘されています.
日本の算数,とりわけ低学年(1年から)では,「まとめて数える」活動が入っています.そこで「一つ分の大きさ」を意識し,たし算やかけ算の式で表すという流れになっています.

Q: 「3+3+3+3+3=15」は,間違いですか?

A: マルかバツかでいうと,マルになると思いますが,先生は「かけ算の意味を理解していない」と判断することになります.

Q: おすすめの文章題は,ありますか?

A: はい,いくつかあります.東京都算数教育研究会が2010年度(平成22年度)に実施した学力調査で,,5万人以上の2年生を対象として実施した出題のうち,

子どもが 3人 います。みかんを 1人に 4こずつ ふくろに 入れて くばります。くばる みかんの 数を もとめる しきを かきましょう。

の文章題(トランプ配りをさせないよう,配り方を指定しています)と,

として式を2通り書かせるものに,驚きを覚えました.
算数の学習プリント―学力調査・算数的リテラシーに対応! (教育技術MOOK)』には,「4つのプランターに3つずつチューリップのきゅうこんをうえます。きゅうこんはなんこいりますか。」という問題があります.出題は,「①たし算の式で答えをもとめましょう。」「②かけ算の式で答えをもとめましょう。」の順です.これにより(そして既習の,累加の概念も使って),式はそれぞれ3+3+3+3=12,3×4=12となること,さらにかけ算のほうが簡単に書けていいねと認識できることを,うかがい知ることができます.
それともう一つ,挙げたいのは,「ひもを4等分した一つ分を測ったら9cmあった。はじめのひもの長さは何cmか。」です.学習指導要領解説の第3学年に入っています.《りんごの問題》と同様に,一つ分の大きさが後に書かれていること,逆思考(除法逆の乗法―「等分」とあるからといってわり算ではない)であること,長さ(量)に関しても式を立てて計算できるようになることが,この1問に込められています.

Q: かけ算で答えを出させてから,「もうひとつ分あるといくつになるでしょう」的な問題が出せませんか?

A: 「もうひとつ分あるといくつになるでしょう」的な問題は、問題集で見かけましたが手元に良いものが見当たらないので,代わりに…
活用力・思考力・表現力を育てる!365日の算数学習指導案 1・2年編』p.107では,1パック6個入りのヨーグルトが,1パック,2パック…と順に増えたとき,ヨーグルト個数がいくつになるか,というのを学習指導案にしています.
なお,かけられる数が1増える場合と,かける数が1増える場合とで話が違ってくるのは,(a+1)×b=a×b+bにて検討しています.

(最終更新:2013-05-02 晩)