大学の期末試験における,答案用紙おかわりプロトコルを提案します.
効率の悪いプロトコル
- 解答者が挙手する.
- 試験監督は,解答者のもとへ行く.
- 解答者は試験監督に小声で,解答用紙を1枚くださいと言う.
- 試験監督は,教卓に戻り,白紙の解答用紙を1枚取る.
- 試験監督は,要求のあった解答者のもとへ行き,白紙の解答用紙を渡す.
解答者が,挙手してから白紙の解答用紙を受け取るまでに,相当の時間がかかっています.試験監督も,移動量が多いことが,問題点となっています.
提案プロトコル
上記の課題を解決するのが,次に提案する手順です.
- 解答者が挙手する.
- 試験監督は,解答者を見る.
- 解答者は,自分の解答用紙を少し持ち上げる.
- 試験監督は,「おかわり」であることを認識し,教卓の上にある,白紙の解答用紙を1枚取る.
- 試験監督は,要求のあった解答者のもとへ行き,白紙の解答用紙を渡す.
前提
- 一つの試験室に,多数の解答者と,一人または少数の試験監督がいます.
- 各解答者は高得点(または合格点)を目指し,解答します.
- 試験監督は静穏かつ快適な試験環境の維持に努めます.筆記具を落としたので拾ってほしい,解答用紙をもう1枚ほしいといった,解答者の要求に対応します.
- 試験開始の前に,各解答者に対して1枚,解答用紙を配ります.すべてを使い切った場合*1,新たな解答用紙を請求できます.本エントリでは,この行為を「おかわり」と呼んでいます.
- 白紙の解答用紙は,十分にあるものとします.もし不足する場合,試験監督は,1枚ですべての解答を書くようアナウンスするか,教務係などへ行ってまとまった部数の解答用紙をもらうかを,考えないといけません.
プロトコルって,何ですか?
『暗号技術大全』によると,プロトコルとは,「2者以上の参加者が関係し,ある課題を達成するための一連の手順」を言います.
「一連の手順」はシーケンスとも呼ばれます.前のステップが終わっていないのに,次のステップを始めるわけにはいきませんね.
次に,「2者以上の参加者が関係」は,アルゴリズムとプロトコルを区別するものとなります.手順に従って「ケーキを焼く」のはプロトコルではありません.「誰かに食べてもらう」まで含めれば,プロトコルと言えます.
そして,「ある課題を達成」というのは…これがなければ時間の無駄ですね.
といったプロトコルの説明は,毎年,担当科目(情報セキュリティ)の「暗号プロトコル」をテーマとした授業で,行っています.
今年度の授業終了時の小テストでは,「期末試験をプロトコルとみなしたとき,そこにどんな攻撃が考えられるか,一つ挙げなさい」という出題をして,受講生に,試験監督を含めて成績評価に関わる側の視点に立ってもらいました.
*1:解答用紙にびっしり書き込むというわけではなく,1ページを大問1つとして割り当てて,解答していくと,よく起こります.大学の解答用紙は,学生・教員として在籍してきた複数の大学で,A4サイズの2つ折り(すなわち,解答用紙1冊は4ページ)でした.