「今日な」
「ああ,注射打ってもろたんやったっけ,すえの子の」
「せやねんけどな」
「ん? まあ聞こか…」
「あとの子も,日赤へ連れてってん」
「そいや昼間,電話で言うてたな」*1
「ついでに,すえの子の注射,ここでできるか,聞いたんよ」
「え!? ご近所さんとこ,予約入れてたんやなかったんか?」
「日赤のほうは,そこがええよ言うたらええってことで,電話して了解をもらってん」
「へえ,そんなことできるんか…」
「やっぱり大病院は,手際がええね」
「ん? 注射か」
「せやねん.しゅっと刺して,しゅっで終わりやもん」
「いつものとこやったら,そうでもないんか」
「せやな.時間がかかるゎ」
「そんなけ短時間やったら,すえの子も,泣く間ぁないな」
「そうよ,すえの子,泣けへんかってんでぇ」
「まあ自慢にもならんが」
「せやけどな,それ見てた,あとの子が泣き出すねん」
「泣くんや…次は自分の番と思たんかいな」
「何回も打たれてる1歳児と,『ん? 何? 何があったん?』のすえの子との違いかな」
「なるほどな」
「あとねえ,今朝,幼稚園の教頭先生が,しんみりした顔で『ごめんなさいね』って言うててな」
「うえの子,何かあったんかいな?」
「昨日な,幼稚園の中で一人,わんわん泣いてんて」
「えらいこっちゃなあ.そない,教頭先生が言うてはったんかいな」
「いや,帰ってから,うえの子が言うてたんよ.けど理由を教えてくれへんかったんで,何かあったんかなあって思ったんやけど」
「はあ」
「教頭先生が言うにはな…」
「事情を知ってはってんな.まあ聞こか」
「うえの子のおるクラスな,うるさかってんて」
「うえの子も,うるさぁしてたんかいな?」
「いや賢かったそうやで.けど先生の話を聞くときにも,クラスが騒がしかったんで…」
「…」
「教頭先生な,『ここのお部屋の子には,お菓子をあげません!』て言うたんやて」*2
「おお,言うねえ」
「まあけどさ,そこからみんなが賢ぉしたらさあ,お菓子をあげるやんか」
「せやな.そういう“大人の言い方”っちゅうか」
「せやけど,うえの子はそんなん,分からんやん.賢ぉしてたのに,お菓子もらわれへんからって,わんわん泣いたんやて!」
「あれれ…しかしまあ,目に浮かぶゎ」
「教頭先生それで今朝な,『反省してます…』って」
「いやまあ,子どもらもいろいろと経験を積んでってるんやなあ…」