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図を正しく選択できていないのに―平成24年度全国学力テストより―

経緯がありまして*1…興味を持ったのは,次の文献です.

以下,ページ番号は,このPDFファイルによります.標題にある「三用法」ですが,次のように表されます(p.20).

  • B÷A=pのpを求める方法が第1用法
  • A×p=BのBを求める方法が第2用法
  • B÷p=AのAを求める方法が第3用法

そのあと,表1から表3までで,三用法について,全国学力テストの算数Aでの問題番号,出題内容,そして正答率が表になっています.全国学力テストは平成19年度からの実施なのに,最初の年度の出題がないのはどうしてだろう,と読み進めると,p.23の表5で,「×純小数の演算決定の正答率」という表見出しがついており,その前のページに,問題が掲載されていました.
とはいえ,最も目を引いたのは,結論の節の直前の段落です(p.23).

演算決定の指導では,「割合論争」以後「数直線図」や「面積図」による指導法が提案されてきている。しかし,平成24年A[3]では,(1)で図を選択させ(2)で式を問う第3用法の問題が出題されているが,(1)の正答率が34.3%,(2)の正答率は41.3%である。(2)を正答した児童のうち(1)を正答したのは21.9%,誤答したのが19.4%である。図を正しく選択できていないのに演算決定が約半数できているということは,数直線図が演算決定の道具として活用されていない実態が明らかとなったのである。

この数字を探そう*2…クロス集計表が見つかりました.

上記引用の数字と対応する箇所を,丸で囲みました.

縦に3つ並んだ囲みを比較したとき,式が正解だけれども,根拠となる図の選択で間違いが半分近くになっているのはなぜだろう,という疑問が当然のように思い浮かびます.
これですが,図の選択と立式とを,別々の問題として解き,照合(たしかめ)をしていない可能性が考えられます.というのも,問題文のうち

  • 赤いテープの長さは120cmです。赤いテープの長さは,白いテープの長さの0.6倍です。

だけを見て,(2)の立式ができます.0.6を整数に置き換えて

  • 赤いテープの長さは120cmです。赤いテープの長さは,白いテープの長さの2倍です。

とすると,白いテープの長さは120÷2で求められます*3.実際には「2倍」ではなく「0.6倍」だったわけですから,式は120÷0.6となる,という次第です.小数点に気をつけて,計算すると,200となります.「赤いテープの長さ(120cm)は,白いテープの長さ(200cm)の0.6倍です。」は,200×0.6=120によって,たしかめることができます.繰り返しになりますが,このようにして白いテープの長さを求め,それが正しいだろうと確かめるプロセスは,図にすることなく行えるのです.
ともあれ,「数直線図が演算決定の道具として活用されていない」という指摘は,なるほどという思いです.図と式に関して,この出題と正答の状況は,「児童の複数解を求める数的思考を調べるための指標として,図は式より厳しい基準である」(複数解)を補強するようにも見えます.出題者の観点では,依存する前後の小問で,前の小問が(正しく)解けなくても後の小問で正解できるような出題が適切なのかということにもなってきそうです.