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二重数直線まとめ

Q&A

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Q: 二重数直線って,何ですか?
A: 下のように,2本の数直線を対応づけて数量の関係を表すための図式です.

Q: 二重数直線を使えば,何ができるの?
A: 小数や分数のかけ算・わり算の問題を,筋道を立てて解けるようになります.

Q: 4マス関係表じゃ,ダメなの?
A: 関係表では,大小関係を把握することができません.数直線に表すと,例えば,1より小さい数でわったときの商が,わられる数よりも大きくなることを,視覚的に確かめられます.

Q: 二重数直線は,学校で使われているの?
A: 国内外とも,近年,注目されています.日本では2008年の学習指導要領解説に,この図が収録されたこともあり,教科書にも掲載されているそうです.また米国のCommon Core State Standards for Mathematicsに,関係表・テープ図・等式と並んで「double number line diagrams」を活用して,割合や比に関する問題を解けるようになることが記載されています.

Q: 今回の一連の記事の特色は?
A: 2点あります.一つは,割合の3用法の文章題について,「割合に当たる数が,文章題でも割合(百分率などを含む)として書かれているか,文章題では割合でない量として書かれているか」という分類項目を設けたことです.もう一つは,矢印に添える「×数」や「÷数」について,Vergnaud (1983)に基づきその意味を明らかにしたことです.

Q: 上の回答の「その意味」を具体的に.
A: はい.「1mの長さが80円の布を2.5m買いました。代金はいくらですか。」という文章題で,80×2.5と式を立てたときの2.5には,「2.5m」という量(長さ)の意味が失われ,「(80円を)2.5倍する」という,scalar operatorとして作用するということです.

Q: 80円/m×2.5mじゃないの?
A: それは80×2.5という式のまた別の解釈ですね.Vergnaud (1983)でも検討されていますので,文献を取り寄せて,どうぞご確認ください.

Q: かけ算の問題って,「2.5×80」にならないの?
A: 1から80に矢印を伸ばして「×80」を添える,ということしょうか.これについてもVergnaud (1983)のほか,『田中博史の算数授業のつくり方 (プレミアム講座ライブ)』に言及があります.いずれも,関係表においての検討です.その後,『筑波大学附属小学校田中先生の算数4マス関係表で解く文章題―小学4・5年生 (有名小学校メソッド)』や,海外の解き方を見る限り,二重数直線として活用する場合には,そのような矢印の書き方は採用されていないようです.

Q: なぜどの図にも「1」があるの?
A: 小学校の5年で学習する,小数のかけ算・わり算の文章題では,単一の演算で求めることを重視しているからです.例えば,「2mの長さが80円の布を5m買いました。代金はいくらですか。」は対象外となります.田の字の解法や比例式(内項と外項の積など)を知っていれば,簡単に計算できるのに,それらが学習されていないのは,なぜかというと,小数のかけ算・わり算の文章題を通じて適切に演算の決定ができることが,比例の考え方を用いて式を立て,答えを求めることと合わせて,期待されているからです.

Q: かけ算が1つにわり算が1つ,じゃないの? あるいは,わり算が2つだったら,かけ算も2つになるのでは?
A: かけ算・わり算の相互関係を分類していくと,「かけ算が1つにわり算が2つ」は,歴史的にも国際的にも,確立していると思います*1.国内では,算数ではなく算術と呼ばれていたころから,除法の意味について包含除と等分除の区別がありました.

Q: 小学校3年で逆上がりできるのは40%って,根拠ありますか?
A: 特にありません.出題そのものは,フィクションです.なお,『小学校学習指導要領解説 体育編』によると,「逆上がり」は第5学年及び第6学年の目標及び内容*2の中にあります.

Q: 画像を使っていいですか?
A: ご自由にどうぞ.小数のかけ算・わり算はhttp://f.hatena.ne.jp/takehikom/20140111/,百分率はhttp://f.hatena.ne.jp/takehikom/20140116/で一覧が表示されます.PowerPointファイルはhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/files/20140111-decimal.pptxhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/files/20140116-percent.pptxです.

*1:「かけ算が1つにわり算が1つ」という相互関係も,知られています.「かけ算が1つにわり算が2つ」は「倍」あるいは〈乗数と被乗数が区別される文脈〉であり,「かけ算が1つにわり算が1つ」は「積」あるいは〈乗数と被乗数を区別しない文脈〉となります.

*2:第3章第2節.それより低い学年にもあるのですが,「補助逆上がり(発展技:逆上がり)」と書かれており,これは同第2節(第3学年及び第4学年の目標及び内容)です.