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赤いテープと白いテープの文字式

今年4月実施の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)について,報告書・調査結果資料が公表されています.概要と,算数・数学の報告書をダウンロードして読みました.
正答率が低かった2つの設問とその分析を読んで,立ち止まりました.具体的には算数B大問2の(2)と,数学A大問2の(2)です.算数(増量前のせんざいの量を求める式と答えを書く)については,https://twitter.com/genkuroki/status/636453971775741954から始まる一連のツイートで整理されていることもあり省略します*1
以下,特に断りがない場合のページ番号はhttps://www.nier.go.jp/15chousakekkahoukoku/report/data/mmath.pdf(72MBあり閲覧注意)によります.
数学A大問2の(2)は,次のとおりです(p.30).

赤いテープと白いテープの長さについて,次のことがわかっています。

赤いテープの長さはa cmです.
赤いテープの長さは,白いテープの長さの\frac35倍です。

白いテープの長さは何cmですか。aを用いた式で表しなさい。

この解答類型と反応率,そして正答率は,p.32で表にまとめられています*2

正解となる\frac53a(またはそれと同値)と解答しているものは23.6%で,その倍以上,51.6%が,\frac35aだったと報告しています.
報告書を読んでいくと,平成24年度の小学校算数Aで出した類題に,ページをとっています.そのときに解答した児童らが,中学3年になったタイミングで,同じ数量の関係について,小数のわり算だったのを文字と分数に置き換え,出題したことが見て取れます.
その後,「学習指導に当たって」と題して書かれた数行と,図によって,どのようにして考えて,\frac35aではなく\frac53aにすればよいかが記されています.

「割合」や「基準量」などが書かれておらず,そこが算数と数学との違いかと感じた一方で,この説明は情報不足にも思えました.赤いテープと白いテープの関係を図示したあと*3,小学校で学習した基準量=比較量÷割合を覚えていれば,白いテープの長さはa\div\frac35a\times\frac53\frac53aとなるのでしょうが,わり算の言葉の式を使うよりも,中学の数学なら,白いテープの長さをx cmとおいて,\frac35x=aとし,これをxについて解いてx=\frac53aとするのが,手堅い解法となります.
この出題(正答率が他のA問題と比べて各段に下がっていることと合わせて)については,小中連携がキーワードになりそうです*4.すなわち同等の関係性をもつ対象について,小学校の算数ではこうだけれど,中学校の数学では見方がどう変わるといった観点で,良い道具立て(教材や授業例)を見つけたり,自分でつくったりできないものかと,考えることがあります.*5
とはいえ,算数と数学の違いについて,良書や新刊もあります.これまで読んだ中では,『算数再入門―わかる、たのしい、おもしろい (中公新書)』と『クラス全員のやる気にスイッチを入れる!算数授業のつくり方 (算数科授業サポートBOOKS)』が勉強になりました.
それと,ごちゃごちゃ言っても自分は算数・数学教育の専門家ではないので,自分の仕事や子育てへの活用も,考慮しないわけにはいきません.うえの子は,夏休みの宿題はひととおり終わらせたと言っていますので,1年生の範囲をほんの少し超えて,面白いと思ってもらえる算数・数学を,検討したいところですが….


いくつかツイートを読んで思ったことを:

(最終更新:2015-09-08 朝)

*1:でも少しばかり:増量について,isbn:9784053035592を読みながら,「割引き・割増しの問題のように,加減算を伴うものは大丈夫で(略)下ごしらえをしてから4マス関係表で調理し,答えを求めています」http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20120127/1327611401と書いたことがあります.田中先生が今後,この本の宣伝の材料にしたり,正解率の低さを踏まえて新たな本を書いたり,していくんでしょうかね.

*2:実施直後に公表された解説資料の表https://www.nier.go.jp/15chousa/pdf/15kaisetsu_chuu_suugaku.pdf#page=28と比較すると,違いは「反応率」の列の有無だけとなっています.

*3:こういった図を,テスト中,問題文の余白かどこかに生徒が描くのを習慣づけてくれればいいのですが.

*4:例えば,全国学力テスト対策をするのなら,実施年度の3年前の国語や算数を特によく読んで,想定問題を作ればよいとなりますが,個人的にはそこに関心はありません.

*5:少し,思っていることを書いておくと,記事にしようと思いながらまだ形にできていない「量感(量の感覚)」に組み入れたいところです.1円玉の直径は2cm,重さは1gといった“暗記もの”,サッカーのペナルティエリアの面積は200坪といった“概算”に加えて,同種の量どうしの“大小関係”を,学んだり活用したりするための量感概念の一つとするのです.

*6:http://www.nier.go.jp/11chousa/11chousa.htm, http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20111119/1321649999

*7:https://www.nier.go.jp/12chousa/12chousa.htm, http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20140108/1389130980