わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

双子ではない,長方形ではない

いきなりですが問題です.

カナコさんとサワコさんは,お父さんが同じです.お母さんも同じです.生年月日も同じです.生まれた病院も同じです.じゃあカナコさんとサワコさんは双子なんだと言うと,ちがうよと答えるのです.養子ってわけでもありません.どうしてでしょうか.

これは『頭の体操』で初めて知り,その後,ワインバーグの著書で,ひとひねりされた文章を読みました.


正方形は長方形・俺流まとめに,ツイート経由で予期せぬ多数のアクセスをいただきました.
Yahoo!検索(リアルタイム)http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20141127を打ち込んでみると,RTすなわちリツイートの状況を知ることができました.
もともとのツイートは,こちらの記事の中から,今の算数教育がおかしいという,ツイート主のスタンスに合った出題事例が,切り出されたものと見受けます.
これがツイッターの真骨頂なのかと思いながら,多面的な情報紹介そして考察のしやすい媒体としてのブログに,こちらは引き続き力を入れていくことにします.


記事では,「東京都算数教育研究会が平成23年度に実施した学力調査」を取り上げましたが,平成25年度分も読めるようになっています.

正方形・長方形の問題はP.3にあります.2年前と同一です.解答が,手書きではなくワープロ打ちになった*1のが,違いといえば違いになります.
各学年の出題について,前回(2年前)と比較して,大きな差は見られませんでした*2.第3学年の,円の半径を使って二等辺三角形を描く問題で,正三角形にすると「A2」となるのも,前回と同じです*3


先日の記事で,「弁別」という言葉を入れましたが,日常あまり使いませんので,算数における使われ方を,ここで見ておくことにします.
小学校学習指導要領解説 算数編のPDFファイルで検索すると,2箇所に出現しましたが,一つはp.152(平行四辺形・ひし形・台形,第4学年),もう一つはp.204(対称な図形,第6学年)であり,低学年では出てきませんでした.
一つ前の解説も開き,図形領域をざっと見ましたが,そこには見当たりませんでした.
『算数教育指導用語辞典』では,p.78に「弁別」という見出し語を設けています*4.しかし正方形・長方形などではなく,ピアジェなどを挙げて,幼児のとらえ方に字数をとっています.
都算研のH25年度の学力実態調査を見直すと*5,合計7回,「弁別」が見つかりました.学年は,2年,3年,4年,6年と広く分かれています.
他書については本日,1冊だけ紹介します.かけ算の順序関連で引用してきた『小学校指導法 算数 (教科指導法シリーズ)』では,p.154で「図形の学習では、一般に分類と弁別によって図形の共通な特徴を明らかにしながら、図形を定義していく」「図形が定義されると、次には、定義に基づいて図形を弁別したり、図形を構成したり、作図したりする」と書かれています.弁別とは何ぞやではなく,「分類」「定義」「構成」などとの違いとして,出題事例と合わせて,弁別とは何か,子どもたちは学年に応じて何ができるようになればよいかを,見ていけばよさそうです.
「□は長方形です。なぜなら、それは四つの角が直角である四角形だからです」あるいは「□は長方形ではありません。なぜなら、それは正方形だからです」といった理由の説明は,この弁別の概念と,近年の言語活動(算数的活動,数学的活動)からしてあり得るかなと思ったのですが,手元の本では出てこなかったので,もう少し本を買い足すなどして,調べるとします.


といったところで解答です.冒頭の問題の答えは,「三つ子(あるいはそれ以上)のうちの2人だから」です.
出題・解答は:

「ひとひねり」というのは何かというと,手元に本がないので記憶で書きますが,三つ子,四つ子,…なんて滅多にないよというツッコミに対して,最近生まれたよと言い,見せたのは動物の子だったのでした.
双子を,Web上の辞書で引くと,goo辞書(デジタル大辞泉)は「同じ母親から一度の出産で生まれた二人の子。双生児。」,weblio辞書(三省堂大辞林)だと「同じ母親から同時に生まれた二人の子。双生児。」で,ほぼ同じです.ウィキペディアではwikipedia:双生児に説明があり,「双生児(そうせいじ)は同じ母親の胎内で同時期に発育して生まれた2人の子供である。いわゆる双子(ふたご)のことであり、多胎児の中では一番多い。」と書かれています.
これらの定義から,「正方形は長方形である」と同じ理屈が言えそうです.すなわち,三つ子(あるいはそれ以上)のうちの2人であっても,辞書やウィキペディアの記述をもとに,あなたがた2人も双子になるんだよという主張が可能となります.
もちろんそんなことをする人はいないでしょう.日常生活において,双子は双子,三つ子は三つ子,三つ子の中の2人は,ノット双子です.
それはそうなのですが,やはり違いもあって,正方形は長方形に包含されます.一方,(日常的な意味での)双子は,三つ子に包含されません.wikipedia:多胎児で整理されています.個人的な話になりますが,さきの子・あとの子が生まれる前に出席した両親学級で,「双胎」「品胎」といった言葉を目にしました.
記号「⊂」を使って,関係を表すなら,正方形⊂四角形,長方形⊂四角形,双子=双胎⊂多胎児,三つ子=品胎⊂多胎児,となります.そして,正方形⊂長方形ではありますが,双子⊂三つ子でも三つ子⊂双子でもありません.

「双子・三つ子」と「正方形・長方形」の関連性に気づいたのは,日曜日,温泉の脱衣所で年配の人に「女の子2人て,かわいいなあ」と声をかけられたのがきっかけでした.「ええまあ」と返したあと,間を置いてから,「女湯には,妻とあと2人,娘が入っていまして,実は子ども4人なんですよ」と言いました.このことを,昨日の記事を書いてから,出勤の途中に,思い出したのでした.
だから本当のことを言うと,双子と三つ子(の中の2人)ではなく,「私には2人の娘がいる」と「私の娘の数は4人である」との違い,なのでした.


某日追記:『コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学』を読み直しました.双子ではないというやりとりは,pp.86-89に書かれていました.上で「最近生まれたよと言い,見せたのは動物の子だったのでした」と書いたうち,「最近生まれたよと言い」も「見せた」も間違いでした.学生=ジュディーが,ふたごではなく三つ子の一人だと明かしたあとのやりとりで,「だって、そういう姉妹が、先生のうちに住んでるんですもの。」と言い,それで先生=ワインバーグがはっとします*6.ローズとスイートハートという名前の二匹の姉妹で,何の動物かは明記されていませんが,p.89の記述から子犬と思われます.「生まれた七匹のうちの二匹だったと思う」で締めくくられています.

(最終更新:2014-12-05 晩)

*1:丸が不揃いなのも,味わい深いです.

*2:平成22年度・24年度の比較:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131026/1382734792

*3:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130804/1375564604

*4:少し引いておくと:「弁別とは,日常的には区別や識別と同義に用いられる用語である。心理学では,「二つまたはそれ以上の異なる刺激の間の差異を感ずること」と説明している。(以下略)」

*5:新旧の学習指導要領解説もそうですが,機械可読になっているのは,非常にうれしいです.「オープンデータ」には,今後も関心を払うことにします.http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130922/1379832469, はてなブックマーク - オープンデータに関するtakehikomのブックマーク

*6:「滅多にないよ」は間違いではなく,原文を引いておくと,「そりゃ先生が、同じ日に生まれたのにふたごじゃない姉妹に一度もあったことがないことだってあり得るけれど、合ったことがあるのに、議論に勝つために都合よく忘れたってことだって、あり得るじゃありませんか。」と,ジュディーが言い,先生は五ドルの賭けに応じます.賭けは,もちろん先生の負けです.