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計量分析とデータベース〜第20回公開シンポジウム「人文科学とデータベース」に出席して

昨日,第20回公開シンポジウム「人文科学とデータベース」が近畿大学にて開催され,出席しました.
発表プログラムを眺めたところ,いくつかの発表者の所属で見慣れないのが,気になりました.これについては,セッション開始前に司会より補足がありました.データベースを開発している企業とのこと.発表は,技術指向,ターゲット指向のものを聴くことができました.
夕方4時前より,「文化情報学とデータベース」と題するパネル・ディスカッションです.実行委員長による趣旨説明ののち,同志社大学の村上征勝先生,立命館大学の矢野桂司先生の順に,それぞれの大学での文化情報学あるいはデータベース構築などの教育・学生指導について,1人30分程度でお話しをされました.それぞれ相手の発表内容について5分程度でコメントをしたあと,フロアからの質問を受け付けるスタイルとなりました.
ご発表やディスカッションを通じて,同志社大学大学院 文化情報学研究科と,立命館大学大学院 文学研究科 行動文化情報学専攻との対比がなされました.メモを文字にしておくと:

  • 同志社大学(大学院 文化情報学研究科)
    • 学部(文化情報学部)を持ち,基本的にはそこから学生が進学する.
    • 学部・大学院を通じて,計量分析(データ分析)に力を入れている.
    • 統計学をしっかり身につけてほしいという方針がある.
  • 立命館大学(大学院 文学研究科 行動文化情報学専攻+アート・リサーチセンター)
    • 学部がない.文学部のほか,映像学部より主に学生を受け入れる.
    • 数量豊富なデータベースの構築事例がある.データベースごとに公開・一部公開・非公開*1を設定し,きちんとコントロールしている.
    • プロジェクト演習を通じて学生にデータベースをつくらせるとともに,コーディネートできる*2人材を育成する.

質疑の中で,大学を離れ,「計量分析」と「データベース構築」の比較について,やりとりがありました.1週間前に開催された〔じんもんこん〕でも,データベース側に人気があり,計量分析の発表の聴講者は,データベースのそれの3分の1か半分くらいだというのです.大小比較に関してはさらにツッコミが入り,発表件数は計量分析の方が多く,委員はデータベース側の方が多いとのこと.
違いが出揃うと,次は,その違いを認識した上で共存共栄を図れないかという方向になります.村上先生か矢野先生のどちらかが,2月に大阪で研究会をやっていますねとおっしゃったので,司会がフロアに質問を求めたとき,手を挙げて,来年で第4回になる〔知識・芸術・文化情報学研究会〕*3とその人的なつながりについて報告しました.
さらに,私自身は理系・工学系なので事情は異なるのですがと前置きして,(1) それぞれの大学院で修了後の学生の進路はどうなっているか,(2) 若手に学会発表の機会を与えたいとよく言うけれども,発表させたらそれでおしまい,いわば「一過性のイベント」にならないよう,長期的な支援をすることができないか,を尋ねました.
きちんと整理できていなかった質問に対して,両先生より丁寧なご回答をいただきました.進路に関して,ドクターコースを終えてすぐに大学教員の職に就くというのはなかなか難しく,ポスドクで何年か勤めて実績をあげるのが多くなります.博物館などでデジタル処理のできる人を公募するところによく申請するというのには,技術と経験(そして人脈)が生かせそうだなと感じました.
シンポジウムは5時半に終了.雨の上がった舗装路を歩き,「ちゃんこ奄美」での懇親会にも参加しました.いわゆる理系の方と机が同じになり,豚足や鍋を食べながら,お互いの大学事情,学生事情について意見交換をしました.

*1:「非公開」は,研究者らのみで使用することと同義です.「電子化し,そのデータは差し上げますので,データを研究に使わせてください」と交渉して海外の所蔵品をデジタル化することがある,ともおっしゃっていました.

*2:自分ですべてをしない,と言い換えられていました.

*3:http://www.jsik.jp/?kansai20150207