「私にとって,情報セキュリティとの関わりは,『学び』そして『研究』としては,大学院に入ってからなのですが,記憶をたどると大学3年の前期,ちょうどみなさんと同じときに,今でも鮮明に覚えている経験がなります.
その1年前にですね,学部内で,この大学じゃないですよ,学生が実験していて,爆発が起こり,2人の方が亡くなったという痛ましい事故がありました.
それを受けて学部長や先生方がいろいろ画策したんでしょうね,次の年度に,『防災特論』という科目が設置されまして,これを3年の前期に履修することになりました.機械から電気から化学から情報から,学部全員の3年生が対象です.
なのですが自分自身,高電圧だとか化学薬品だとかのお話を聞いてビデオを見て,自分のこれからのことに関係しそうになかったので,退屈気味に出席していました.
それで,試験を受けて,予想もしなかったところに,情報分野の出題を目にしたのです.
○か×のいずれかを答えなさい…正誤判定問題の中に,『コンピュータウイルスは空気感染しない』という文があって,びっくりしたんです.
本日の授業の配布資料に書いたとおり,コンピュータウイルスの概念や用語は,生物学や医学で用いられるものを借用しています.そのあたりに注意して,コンピュータウイルスは,『空気感染』するのかどうか…
いや違うでしょうと.ウイルス情報を,物理層で,電気信号としてやりとりすることによって,他の計算機にも感染するわけです.
…と考えまして,しないが正しいのだから『○』と解答しました.持ち込みなしで,点数は覚えていませんが,単位をとることはできました.
しかしまあ,現在では,有線よりも無線によるやりとりが多い,日常の我々ですから,ウイルス情報が,無線LANのアクセスポイントを介してばらまかれ,それによって感染される,きちんと対策しているところには感染しない,といった話は,空気感染と見なせそうです.
出身学部で今でももし,防災特論の科目があるのなら,情報分野の出題は,新たな技術や使われ方を反映して,きっと変わっているんでしょうね.
さて…」
なにこれ
担当科目の第2回で,話しました.これは自分の持ちネタの1つで,過去の授業でも話していますし,はてブを検索すると,コメントも見つかります*1.
当ブログでは書いてきていなかったので,今回,文章にしました.
授業のおわりに,その回の授業で学んだことをもとに,正誤判定問題を1つ作りなさいと出題しました.スクリーンにはその指示のほか,例文として「コンピュータウイルスは空気感染しない」を挙げておきました.
提出してもらった答案の中では,「トロイの木馬はおもちゃである」が秀逸でした.攻撃側からすると,「トロイの木馬型」などと特定されてしまうものは(すぐに対策が立てられ)攻撃力が低く,おもちゃ扱いされる,という解釈もできます.