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式の思い違い8選

いきなりですが問題です.以下の解答はどれも不正解です.どのようにすれば正解となるか,そしてなぜ間違えたかを答えましょう.

(1)
問題:4x=46を解け.
解答:x=6

(2)
問題:xy=-8を満たすxとyの値の組を一つ答えなさい.
解答:x=-3,y=-5

(3)
問題:xとyは正の整数とします.x+y=4に当てはまるxとyの値の組をすべて答えなさい.
解答:「x=1,y=3」「x=3,y=1」

(4)
問題:(x−30)より15多い数を式で表しなさい.
解答:(無回答)

(5)
問題:\sqrt{16+9}を計算しなさい.
解答:\sqrt{16+9}\sqrt{16}\sqrt{9}=4+3=7

(6)
問題:(x−a)(x−b)=kを,xについて解きなさい.
解答:x=k+a,x=k+b

(7)
問題:A\times\frac{1}{A}を計算しなさい.
解答:A\times\frac{1}{A}=0

(8)
問題:\frac{x+1}{x+4}\frac56を解きなさい.
解答:x=4,2


解答の前に元ネタです.*1

上記の問題の大部分は,この文献の後半に紹介されている,海外文献からの事例です.本記事作成において,アレンジしたものもあります.

といったところで順に見ていきましょう.(1)の「4x=46を解け → x=6」については,両辺を4で割ったとき,左辺はxになりますが,右辺は[tex:\frac{46}{4}]=[tex:\frac{23}{2}]としないといけません.誤答について,2種類の読み間違いが考えられます.一つは4xを「よんじゅうエックス」とするもの(([https://twitter.com/LimgTW/status/640297417229774848].ご指摘感謝.)),もう一つは46を(4xと同様に)「4と6の積」と判断してしまったものです.

(2)「xy=-8 → x=-3,y=-5」は,そのxとyの値ではxy=15≠-8となって間違いです*2.足し算と掛け算の取り違いをしています.xyという式にx=-3,y=-5を代入したとき,-3-5(この式を計算すると確かに-8です),ではなく,(-3)(-5)となります.正解となる組を一つ挙げるなら,x=2,y=-4でしょうか.
(3)「x+y=4」の誤答については,「x=2,y=2」が抜けています.異なる文字には必ず異なる値が入るという誤解に基づいています.
(4)「(x−30)より15多い数」について,正解を書くと,(x−30)+15,またはそれを計算してx−15となります.簡単そうな問題について,上記文献では「文字が数を表すことの認識の欠落」を指摘しています*3
(5)「\sqrt{16+9}\sqrt{16}\sqrt{9}」は,足し算では根号を分けることができないのにやってしまった*4,ということで,(2)とは少し異なる種類の,足し算・掛け算の取り違いです*5.正しくは\sqrt{16+9}\sqrt{25}=5です.
(6)「(x−a)(x−b)=k」は,間違った理由から先に書くと,AB=K ⇒ A=KまたはB=Kとしていることです.とはいえそれは,K=0のときにのみ成立します(誤った一般化,とも言えます).面倒でも,展開と移項で「xの2次式=0」にしてから,平方完成か解の公式で,解くしかありませんね.
(7)「A\times\frac{1}{A}=0」も足し算・掛け算の取り違いですが,(2)のミスとまた,性質が違うように思います.文献には「加法の単位元と乗法の単位元を混同する事例」と書かれていました.\frac{1}{A}はAの逆数(乗法の逆元)なのに注意すれば,「A\times\frac{1}{A}=1」ですね.
(8)「\frac{x+1}{x+4}\frac56 → x=4,2」は,分子と分母でそれぞれ等式(x+1=4,x+4=6)を作り,解いています.しかしながらx=4を左辺に代入すると\frac58,x=2だと\frac36\frac12となり,右辺と等しくなりません.「\frac{A}{B}\frac{C}{D} ⇔ A=C,B=D」は一般に成立しません.
分母を払ったらxの1次方程式が得られ,解くと,x=14です.念のため,もとの方程式の左辺に代入すると,\frac{15}{18}となり,通分すれば\frac56に一致します.

(最終更新:2015-09-08 朝.タイトルを「式の勘違い8選」(当初は「間違いだらけの数学テスト」でした)から変更し,(5)の問題と解説を差し替えました)

*1:著者は『数学教育学研究ハンドブック』のうち第3章 教材論 §3 文字式の執筆者であるほか,平成27年度用東京書籍算数教科書の代表著作者でもあります.

*2:マイナス×マイナスはプラスになるから,決して-8にならない,というツッコミもできます.

*3:もう少し,引用すると:最も基本的であると思われる「文字が数を表す」ということ自体を十分に理解していない実態がDavisの研究において見出せる。また、Bellらは、「xより15多い」を「文字の式」に表すことは容易であるが、「(X−30)より15多い」を「文字の式」で表すことに生徒は抵抗を示すと報告している

*4:文献の中では,「線形性の利用による誤り」とラベリングしています.

*5:\sqrt{16\times9}\sqrt{16}×\sqrt{9}=4×3=12は,問題ありません(\sqrt{16\times9}\sqrt{144}=12です).