先日,大阪へ行ったときに,何冊か本を購入しました.そのうち2冊は,組体操に関するものです*1.
8時間でできる!組体操の指導法 (教育技術MOOK よくわかるDVDシリーズ)
- 作者: 杉原浩二,川野幸一,戸田克
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/08/01
- メディア: ムック
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目次*2の左のページ,「はじめに」に,学習指導要領との関わりが書かれていました(p.2).
「これからの社会を生きる児童に、健やかな心身の育成を図ることは極めて重要である。体力は、人間の活動の源であり、健康の維持のほか意欲や気力といった精神面の充実に大きくかかわっており、生きる力を支える重要な要素である」。これは新しい学習指導要領の教育課程編成の一般方針の解説の一節です。教育課程編成の一般方針の中で、特に「体育・健康に関する指導」が設けられています。体育に関する指導では、「生涯にわたって運動やスポーツを豊かに実践していくことと体力の向上を重視し、児童自らが進んで運動に親しむ資質や能力を身に付け、心身を鍛えることができるようにすることが大切」なのです。こうしたことを踏まえるとき、学校体育での指導の仕方を工夫していく必要があります。
高学年の体育の学習は、いくつかの運動領域に分けることができます。その中で組体操は、体つくり運動の中の体力を高める運動と考えることができます。体力を高める運動は、「ねらいに応じて、体の柔らかさ及び巧みな動きを高めるための運動、力強い動き及び動きを持続する能力を高めるための運動をすること」が内容として挙げられていますので、まさに組体操が体力を高める運動として適していることがわかります。
上記で「新しい学習指導要領」とは,平成20年(2008年)に改訂されたものです.「これからの…要素である」について,総則に,そのものずばりの記載はなかったものの,文部科学白書で,です体に変えた文を見ることができました*3.「ねらいに応じて…すること」は,体育の第5学年及び第6学年・2 内容・A 体つくり運動に載っています.
なお,「はじめに」は7つの段落からなっており,カギカッコの使用は,上記2つの段落のみです.それ以降は,競争ではなく協力やコミュニケーション能力向上の手段として組体操の意義や,組体操が運動会の華であることを述べ,指導にあたっての注意点を簡潔に示してから,最後は本書の構成となっています.先頭から読み直すと,文科省の方針,子どもたち(体育の授業や運動会),教師による指導といった,さまざまな観点で,組体操をなぜ,どのように行う(子どもたちにさせる)べきなのかの概略が,1ページでまとめられているわけです.
本文ですが,技の解説は1人技から1人ずつ増やして10人技まで,それから多人数技や隊形などです.すべて白黒で,各技には手描きの(とはいえ十分に洗練された)イラストが添えられています.
6人ピラミッドは6人技でp.21,三段タワーとピラミッドは10人技のp.25に載っていましたが,ポップアップピラミッドや,5段以上のピラミッドはありません.なお,三角錐型ピラミッドで使用される,最下段の人は四つんばい,下から2段目の人の手は最下段で足は地面,下からn段目(n≧2)の手はn-1段目で足はn-2段目,という支え合いの構造は,インフィニティーという21人技(p.27)で使われています.
次の本に移ります.
DVD付き みんなが輝く組体操の技と指導のコツ (ナツメ社教育書ブックス)
- 作者: 谷古宇栄,
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2015/02/17
- メディア: 単行本
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全編フルカラー写真です.子どもたちによる技が写っており,体格差への配慮もあちこちに見られます.ピラミッドについて,6人ピラミッド(pp.68-71),高速ピラミッド(pp.71-72)はいずれも6人技です.前者では3段目以外の隣り合う演技者同士で腕を交差させているのに対し,後者は腕の交差をしていません.
運動会当日に欠席者が出たときの対応や,ビデオ撮影をして翌年の指導だけでなく,運動会が終わった最初の授業で子どもたちと鑑賞するとよいという提案(p.126)もまた,長年携わってきたからこそと理解しました.
さてこの本では,「はじめに」の冒頭に,イエス・バットの形式で,学習指導要領との関わりが書かれていました.
組体操という運動は、『小学校学習指導要領解説 体育編』には示されていません。しかしながらこの運動によって養われる運動感覚は、今の児童にとって重要なものが少なくありません。直立の姿勢維持、腕立てによる体の支持、2人組によるバランス感覚など、多人数になればなるほど普段の体育の授業では身に付けることが難しいものもあります。また、集団でひとつの目的に向かって何かを創り上げるという経験は、何にも代え難い価値が含まれています。
組体操の意義を,外の(文科省の)文章から見つけてくるだとかよりも,上記くらいにして,本の内容に引き入れるのも,ありなんだなあと感じました.
昔書いたこと:
*1:ともにDVDつきですが,中身は見ていません.
*2:目次の下に,「組体操と組み立て体操」と題して,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20160202/1454360393で取り上げたのと同じ趣旨の文章が見られます.文章の後半では「運動会で行われている組体操は、実は組み立て体操のことなのです。しかし、多くの学校では、組体操といっているようです」とし,用語は「組体操」で統一して解説することを断っています.
*3:例えばhttp://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab201501/detail/1361563.htm