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練か錬か

先週の火水木は,家族旅行に出かけていました.2日目は長野県の善光寺にお参りしから,群馬県富岡製糸場を見てきました.
館内の掲示物に「精練」というのがありました.写真を撮っていなかったので,Webで調べてみますと,世界遺産 富岡製糸場と絹産業遺産群 : 現代の絹産業の中に「生糸は表面にセリシンというニカワ質の付いたままのゴワゴワした糸です。柔らかく、光沢のある絹糸は、この表面のセリシンを取り去ることで生まれます。この作業を「精練」と言います」と書かれていました.
なのですが,あのとき見た掲示では,「練」は,シールを貼られた状態でした.言ってみれば,修正後です.タイトルと本文の複数の箇所で,四角で縁取られた「練」の字がありました.本文で1箇所だけ,「精錬」となっていました.掲示物の作成段階では,すべて「精錬」と書いてしまって,誤記に気づいて「錬」を「練」に替えた(が替え損なった),と思われます.
「精錬」の「錬」は金偏だから,金属を何かより良くするもので,「精練」はの「練」は糸偏だから,糸を何かより良くするものだろうなと,思いながら検索すると,分かりやすい解説を,知ることができました.

使い分けには納得したものの,金偏と糸偏の違いだけで説明できるものなのか,と思いながらもう少し検索すると,Q&Aを見つけました.

質問は,「練る」と「煉る」の違いですが,ベストアンサーには以下のとおり,「錬る」を加えて,それらの使い分けが記されていました.

ベストアンサーに選ばれた回答
kaijin21_1さん 2015/2/25 12:01:35


「ネる」には、「煉る、練る、錬る」があります。
「煉る」は、「火を通してこね固める」という意で、「餡(あん)を煉る」などと使われます。
「練る」は、「しなやかで均質なものに仕上げる」という意で、転じて「さらによいものにするために内容を検討したり、手を加えたりする」「学問や技芸などを鍛えみがく」という意にもなり、「糸を練る、構想を練る、文章を練る」などと使われます。
また、「錬る」は、「金属を熱したり冷ましたりして鍛えること」という意で、「刀を錬る」などと使われます。
..ただし、「煉る」は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の占領政策下の1946〔昭和21〕年11月16日に内閣から告示された「当用漢字表」に掲載されていませんでした。
....当用漢字表にない漢字を含んで構成されている漢語について、同音の別の漢字に書き換えるための指針として、国語審議会が昭和31.7.5に報告した「同音の漢字による書きかえ」で、煉→練..と書き換えるようになりました。(略)

なお,ベストアンサー内のURLはデッドリンクとなっており,現在,常用漢字表http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19811001001/k19811001001.htmlより見ることができます.
本にも,当たっておきましょう.

常用字解

常用字解

この辞典のp.665に,「練」と「錬」が載っています*1.解説の3行目までは,ほぼ同一内容です.その後ですが,「練」に書かれた「熱して糸を柔らかにするという「ねる」方法をいう」,「錬」に書かれた「水を使ってねることを(さんずいに柬)*2、火で熱してねることを煉という」にはなるほどです.解説文や熟語のは,少しずつ異なっていますが,「きたえる」の意味に転用されていることを指摘して,それぞれの解説を締めくくっています.
出てきた漢字を整理してみます.

  • 火を使って「ねる(加工する)」のは,煉
  • 水を使って「ねる(加工する)」のは,さんずいに柬
  • 金属を「ねる(加工する)」のは,錬
  • 糸を「ねる(加工する)」のは,練

ただし,煉も,さんずいに柬も,常用漢字ではなく,とくに煉は,練に置き換えられてきたことを,記しておかないといけません.古い字と新しい字,つくりの字形(柬か東か)というだけでなく,「ねる(加工したり純度を高めたりする)」ための手段と対象でも,2文字ずつに分けられるのは,面白いところです.


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(最終更新:2016-05-10 晩)

*1:「煉」は,isbn:4582128084のp.229に,またこの字の偏を糸や金に置き換えた字はその次のページに,載っています.

*2:http://jigen.net/kanji/28229