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ケーキが3分の1個で100g

いきなりですが問題です.

ケーキが3個で,その合計の重さが300gのとき,1個あたりの重さは,300÷3=100(g)で求められますね.
では,ケーキが3分の1個で,その重さが100gのとき,1個分の重さは,どのような式で求めればよいでしょうか.

さっそくですが解答です.「では」より前の考え方を,「では」より後に適用すれば,100÷\frac13=300(g)と表せます.
それとは別に,3分の1個で重さが100gのケーキが,3つあれば,1個分のケーキになりますので,そう考えると,100×3=300(g)という式を立てることもできます.
といったところで元ネタです.

「式は、100÷\frac13でなければいけないのです」と結論づけています.その上で,計算するにあたっては,わる数の逆数をかけるという,100÷\frac13=100×3=300を記載しています.
コメントを見ると,100×3でもいいじゃないかという意見が,複数の人から出ています.そのやりとりから,新たな記事や,掲示板を使った論点の整理が,公開されています.

さて,このケーキの件ですが,類題が全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で問われています.具体的には,平成24年度実施の小学校算数A,大問8です.
次のページを基点として,PDFファイルをダウンロードできます.

以下で使用するのは,平成24年度の「調査問題・正答例・解説資料」と「報告書・調査結果資料」です.前者(解説資料)は実施直後に公開され,各出題の意図が書かれています.後者(調査結果)は,それぞれの解答の類型に反応率が加わっていまして,正答率・誤答率だけでなく,より細かく,どんな答え方をどれだけの解答者がしたかを,知ることができます.
出題は次のとおりです.

冒頭のケーキの問題と,1つ違う点があります.ケーキの問題では,分数のわり算が想定されていますが,これは6年で学習します.全国学力テストの算数では,5年までに学習した内容に基づいて出題されるため,\frac13という分数ではなく,「25%」(百分率)が用いられています.
調査結果のp.214(PDFだとp.43)によると,「8÷0.25」と式を立て,32と解答している*1のは,37.9%です.また答えは同じで,式を「8×4」としているのは,20.7%となっています.いずれにも,表の右端の列に「◎」がついており,これは,「正答については,設問の趣旨に即して解答として求める条件を定め,その条件を全て満たしているもの」(解説資料より)を意味します.
国学力テストの評価基準では,どちらも正解であり,わり算の「8÷0.25」*2にするのが,かけ算の「8×4」を書く子どもよりも多いことが,ここから分かります.
ケーキの問題に戻って,制約のない小学生向けの文章題としては,100÷\frac13も100×3も,正解としていいのではないかと思います.100÷\frac13のみを正解としたければ,「分数の式をつくりなさい」といった断りを入れるのが一案となります.クラスで,あえて断りを入れずに出題し,100÷\frac13と100×3が出たところで,それぞれの理由を子どもたちに答えてもらったあと,同じ場面を異なる式で表したものであり,そこから,分数のわり算は,ひっくり返してかけることで求められると展開するのも,一つの進め方ではないかと思います.
見てきた記事の中に「文中の数を使って書き直しなさい」という指示がありましたが,全国学力テストでは,問題文にない数を見つけることが期待されていたりします.今年の出題からだと,算数A大問9(1)が該当し,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20160423/1461423599で紹介してきました*3


この記事のはじめに「「では」より前の考え方を,「では」より後に適用すれば」と書いたのですが,そんなことをしていいの? 分数でも同じようにわり算にしていいの? という検討を,しておくべきではないか,とも思います.
「形式不易の原理」や「演算の意味の拡張」が関係してくる話で,算数教育としては,安易な一般化は良くない,そのつど,立ち止まって,適用してよいのを確認するのが,基本的な路線となります.
http://selfyoji.blog28.fc2.com/blog-entry-4763.htmlにせよ,http://togetter.com/li/964852にせよ,その確認は,読者に任されているのが,少々残念です.

*1:「人」は,解答欄に記載されているため,児童らが書く必要はありません.

*2:「8÷\frac{25}{100}」とすると,分数のわり算となってしまいます.100でわったり分数の式にしたりするなく,25%を0.25に置き換えることは,百分率の学習においてなされていると思っていいでしょう.百分率のかけ算・わり算で「100分の…」を使う人は,高学年の算数について,昨今の状況をきちんと把握してなさそうという認識を持っています.

*3:単位量当たりの大きさの求め方について,算数A大問4では,「14÷8」は◎の正答,「□×8=14」は○の正答となっています.また算数B大問3(1)では,1つの場面について3人が異なる式を挙げており,それぞれの式の意味を解釈すること(式の読み)が問われています.