いきなりですが問題です.
元ネタは,以下の本のp.23です.
- 作者: 古藤怜,新潟算数教育研究会
- 出版社/メーカー: 東洋館出版社
- 発売日: 1990/06/01
- メディア: 単行本
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絵のすぐ下には,「この授業ではこのような場面提示に関して,子供たちから次のような考えが発表されたのである。ここで,解答の①,②の考えは,一般に予想される考えであるが,③,④は独創的であるといえよう。」と評しています.
順に書き出してみます.なお,「問題」の形式になるよう,表現を原文から変更しています.
①は,式は5−2=3です.問題文は,「馬が5匹遊んでいます.そのうち2匹はおうちへ帰ろうとしています.柵の内側には,何匹の馬がいますか」です.
②は,式は5−3=2です.問題文は,「馬が5匹遊んでいます.柵の外側に,2匹います.柵の内側には,何匹の馬がいますか」です.
えっ,その問題文だったら,式は①と同じで5−2=3じゃないか,と思ってしまうところです.ここは,実際の授業(を著者が取り上げたの)が,②の式と問題だったのでしょう.5−□=2の□を求めるとすれば,話は通ります.
③は,式は4−1=3です.問題文は,「子馬が4匹遊んでいました.夕方になったのでお母さん馬が迎えに来ました.1匹の子馬が帰りました.残りの子馬は何匹ですか」です.
これについて,p.24では「詩情豊かな素晴らしい発想である」「1匹の馬を母馬と見て異なる集合の要素と考え(略)数学的な考え方の本質である,「見えないものを見る」という力が養われている素晴らしいクラスであると考えられる」と,褒めたたえています.
この着想に誘発されて,④へと進みます.
④は,式は6−3=3です.問題文は,「はじめ6匹の馬が遊んでいました.そのうちすでに1匹が帰っていました.いま,続いて2匹が帰ろうとしています.柵から出た馬は1+2=3で3匹です.柵の内側には,何匹の馬がいますか」です.
④は,式は7−4=3です.問題文は,「はじめ7匹の馬が遊んでいました.そのうちすでに2匹が帰っていました.いま,続いて2匹が帰ろうとしています.柵から出た馬は2+2=4で3匹です.柵の内側には,何匹の馬がいますか」です.
④は,式は8−5=3です.問題文は,「はじめ8匹の馬が遊んでいました.そのうちすでに3匹が帰っていました.いま,続いて2匹が帰ろうとしています.柵から出た馬は3+2=5で3匹です.柵の内側には,何匹の馬がいますか」です.
いくらでもできます.同書p.24では「④ 6−3=3,7−4=3,8−5=3,……」とし,6から始まるひき算と,7から始まるひき算の説明を続けています.
ここから授業では,「答えの数がいつも同じひき算においては,ひく数が1増える(減る)と,ひかれる数も1増え(減り)ます。つまり,a−b=(a±1)−(b±1)」と教師がまとめた,とのことです.
楽しい授業,そして教室だったでしょうね.
『多様な考えの生かし方まとめ方』は,今月になって見かけたブログ記事やPDFファイルで,出典に挙げられていて,購入しました.それらの引用元では,この本のポイントとして,多様性の分類を指摘しています.まず,p.22では,点線の箱囲みで以下のとおり,簡潔にまとめてあります.
I. 独立的な多様性:それぞれの考えの妥当性に着目して
II. 序列化可能な多様性:それぞれの考えの効率性に着目して
III. 統合化可能な多様性:それぞれの考えの共通性に着目して
IV. 構造化可能な多様性:それぞれの考えの相互関係に着目して
より詳しい解説は,pp.43-44で読むことができます.また牧場のひき算の授業展開は,III(統合化可能な多様性)に分類されています.
IIからIVまでは,それぞれのラベリングと一言説明から,多様性をどう捉えたいのかがおおよそ,分かるのですが,Iは,明らかではありません.そこで,p.43の該当箇所を見ると,「多様な考えが,数学的なアイデアとして妥当であり,かつそれぞれが互いに独立したアイデアである場合」と記されていました.金子みすゞの詩を借りると,「みんなちがって,みんないい」ということでしょうか.
それと,20個以上のおはじきについて,「パッとわかるように並べる」授業が,pp.60-61にありました(関連:一目見て14個).6種類の解法のうち,数字の形にしたのが39人中2人でした.「21の数字型でも,21個なくったって21ってできるから,おかしいです」「21としても本当にあるかどうかわからない」と,他の児童からツッコミが入っていました.