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卒業論文のリサーチ・クエスチョン

中間チェックを赤入れ返却して,指導はおしまい,あとはゴールに向かって邁進せよ,と突き放すわけにもいきません.提出締切まで何度か,ファイルを読んでチェックをし,充実させるべきところを提案したり,分かりにくいところは修正を指示したりしていきます.
そんな中,学生2人の原稿を見て,それぞれ,第1章のはじめの3つの節で,書きにくそうだなと感じました.当研究室の卒業論文は,第1章は4つの節で構成し,「1.1 研究の背景」「1.2 本研究の目的」「1.3 本研究の成果」「1.4 本論文の構成」とするのが慣例となっています.その1.1から1.3で,苦労しているように見えるのです.
その苦労は,分からないでもありません.構成は,それまでの卒業論文をコピーできますが,何を問題とし,研究を通じてどのように解決したかについてまで,コピーができないのですから.
ともあれじっくり,原稿を読んでみると,「リサーチ・クエスチョン」が明確になっていないことに気づきました.リサーチ・クエスチョンとしてどのようなものを立て,そこから論文をどのように展開すればよいかについては,例えば以下で書かれています.

今からリサーチ・クエスチョンをとことん追求せよと要請しても,コスト・パフォーマンスが良くないので,原稿の他の章節の指示を書き出したのち,少し時間をとって,考えてみました.
1人目の学生は,「(対象)において(手法)が有用なのではないか?」の形で,表すことができました.そしてそのクエスチョンに対し,肯定的な解(ソリューション)を与えるために,手法をもとにシステムを構築して100人以上の学生に使ってもらって検証し…となっていくわけです.
2番目の学生については「(情報源)は(我々の関心)を代表するものであるか?」と表現できました.このクエスチョンに対しては,否定的な解を目指します.すなわち,他の情報源からも収集するとともに,従来の情報源との比較を通じて,既存の情報源プラス今回収集した情報源により,我々の関心に迫ることのできるデータベースシステムを構築することができる,と展開したいところです.
10分足らずの思案とはいえ,それぞれのリサーチ・クエスチョンに対し,肯定的な答えと否定的な答えが望まれるというのは,感慨深く思いました.
しかし,のんびりしていられません.こちらで考えたクエスチョンを送りつけて,論文に明記せよというわけにもいきません.リサーチ・クエスチョンの必要性とともに,その表記や,研究目的段階の疑問文による表現は,論文の書き方として普及しているわけではないと書いた上で,それでも,リサーチ・クエスチョンを持っておくと,第1章,そして論文全体が書きやすくなるんですよと文章にし,メールを送りました.