その内に大変な事が起きる迄気が付かないんですかね? その時に誰が責任をとらされるんですかね? pic.twitter.com/sIi4WTTS9E
— Toru Kitamura (@kitamura_toru) 2019年6月17日
それまでのツイートを見ると,組体操の危険性の認知という文脈であることが分かります.また「(ハインリッヒの法則)」と題する3層ピラミッド構造の画像は,wikipedia:ハイリッヒの法則,wikipedia:ヒヤリ・ハットに見られる画像と同一です.
それはそれとして,組体操指導におけるヒヤリハットの図式は,『新「組体操」絶対成功の指導BOOK』p.9に載っています.
安全と見栄えを両立する! 新「組体操」絶対成功の指導BOOK
- 作者: 関西体育授業研究会
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
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このページ全体の見出しは「前年度の確認」です.本文にはさらに,「前例を踏襲しない」「高さや段数を検討してみる」「一斉からズレを作る」「前年度の反省から」の小見出しが設けられており,インシデント・ヒヤリハット・アクシデントを組み合わせたイラストが,入っていました.「前年度の組体操を振り返ることで,危険を感じ,アクシデント(事故)にならないようなシステムを考える必要があります。」の文で,ページを締めくくっています.
冒頭のツイート(そしてWikipedia)で目にした図と,「ヒヤリハット」の位置が異なります.どちらの図が,正統なのでしょうか....
少し調べると,左から右への流れで,インシデントとアクシデントの間にヒヤリハットを挟んだ図を,見つけました.
しかし読み進めると,ハインリッヒの法則を表す3層のピラミッドでは,「ヒヤリハット」は最下層です.
以下のPDFファイルでは,最初のページに3層のピラミッドが描かれており,「ヒヤリハット」は真ん中です.しかし次のページでは,「ハインリッヒの法則で示されるように1件の重大災害の背景には300件のヒヤリ・ハットが存在しているといわれます。」となっていて,直後のイラストで「300」すなわちヒヤリハットの層は最下に位置づけられていました.
また別のページでは,さきに「300件のヒヤリハット」を最下層に置いた図を示しています.メインとなる「ヒヤリ・ハット報告書」の様式では,「ヒヤリ・ハット、ニアミス」を中間層に位置づけ,下層の「想定ヒヤリ、兆候の発見」,上層の「軽微な「負傷や物損」等」と区別しています.
この報告書の三角形をよく見ると,上層のさらに最上部だけが,塗りつぶされています.「1件の重大な事故」は,この報告書の対象外であるけれど,そのような事故を発生しないよう,未然防止に努めよというのが,表現されているように見えます.ページをさかのぼると,「「ヒヤリハット報告書」は安全ミーティングやKY活動を行った後に、起きた“危険”を報告するものです。実際に災害に繋がってしまった場合は「ヒヤリハット」には含みません。」とも書かれていました.
ヒヤリハットを含むピラミッドを,3層に限定せずに調査すると,新たな描かれ方を見つけました.
この図から「不安全状態・不安前行動」の層を取り除けば,Wikipediaなどの3層構造と同一となります.それに対し,「重大災害」と「軽微な災害」を(災害として)まとめることで,ヒヤリハットに至らない「兆候」の認知を考慮した,3層構造が得られます.
以上を総合すると,以下のとおり言うことができそうです.
- ヒヤリハットを最下層に置く場合,「300」の数を添えることで,1件の重大事故にも多数のヒヤリハット事例が背後にあることを示しています.
- ヒヤリハットを中間層に置く場合,その背後に,より多数のヒヤリハットに至らなかった「不安全状態・行動」があることを示しています.そして「インシデント」と「アクシデント」とを,つなぐものとなっています.
「どちらの図が,正統なのでしょうか」について,いちおうの答えを書いておくと,ハインリッヒの法則において,ヒヤリハットを位置づけるのなら,間違いなく,最下層です.
それと別に,事故を含むピラミッドとしては,wikipedia:国際原子力事象評価尺度(wikipedia:en:International_Nuclear_Event_Scale)が知られています.これに基づき,1つの事故には多数の「事故でないもの」が潜んでいることを,8層は多いので3層に減らして,表現したときに,ヒヤリハットを最下層とする描き方と,中間層とする描き方が生まれ,現在まで共存しています.ハインリッヒの法則というよりは,アクシデント(事故)とインシデント(異常事象)の間に,何かを入れるとすると,日本では「ヒヤリハット」が最適だった,ということです.
なお,組体操へのヒヤリハットの適用に関して,先生方が前年度の聞き取りをするだけでなく,練習中や,本番が終わってからも,子どもたちには感想を含む実施の記録を書かせ,そこから担任の先生が「ヒヤリハット」の事例を積極的に取り上げてクラスで,また校内で共有して,事故ゼロに努めるというのが,あってもいいのではないかと思っています.
(最終更新:2019-06-19 朝.タイトルを当初の「インシデント・ヒヤリハット・アクシデント」から変更しました)