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ワントップでないピラミッドの荷重計算

 いくつかの7段ピラミッドの構成と荷重計算が,駄文にゅうすさんとこからリンクされました.
 その後,ツイートや読み直した書籍から,「ワントップでないピラミッド」をいくつか,目にしました.それらの構成や荷重計算は,gfで直接,用意していませんが,gfを呼び出して計算し,コンソールやExcelファイルに出力するプログラムを,新たに作成し,Gistに公開しました.
 概要は以下の通りです.
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 「俵型5+4+3」「俵型4+3+3」「三角錐型6段ツートップ」「万里の長城11+10+9」の構成は,Gistで公開したスクリプトに入っています.残りの3つは,https://github.com/takehiko/gf/blob/master/excel/sheet_uni.xlsxより取り出しました.全ての演技者の自重を1としています.
 概要および各ピラミッドのExcelワークシートは,まとめて一つのExcelファイルにしまして,https://drive.google.com/file/d/1UFSBt6QwAnEsFZVUJZYgV0RrkSIWsq8r/view?usp=sharingより閲覧とダウンロードが可能です.


 ワントップでない4つのピラミッドについて,出典を挙げます.「俵型5+4+3」「俵型4+3+3」のもとになったのは,以下のツイートです.


 新聞記事のうち,ピラミッドの組み方に関わる記述を取り出します.

宇和暑の調べによると、同小学校の六年生は一クラス(二十六人)で、放課後、教室で卒業記念写真を撮っており、学校新聞の記念写真用に、十三人が「人間ピラミッド」を作り始めた。「ピラミッド」の三段目に三人の児童が乗ったところ、崩れたらしい。

 「三段のピラミッド」ではなく「ピラミッドの三段目」です.三段目は「三人の児童」です.通常の3段ピラミッドはというと,上の概要の「triangle (俵型3+2+1)」のことです.1988年なので,三角錐型(立体型)は普及しておらず,俵型(平面型)を想定します*1
 「三段目」は組む途中と考えられます.そこで2種類を検討しました.一つは,「十三人」を「十五人」に読み替え,俵型で5段のピラミッドを作ろうとしていたと解釈します.最下段は5人,(下から;以下同じ)2段目は4人,3段目は3人となります.この組み方を「俵型5+4+3」と表記します.
 もう一つは,十三人で,最上段は1人,その下は2人,さらに下は3人とし,この3人を「三段目」に対応づけます.ここまでで6人で,残りは7人です.最下段を4人,2段目を3人として,試算したのが,「俵型4+3+3」です.

 概要の表を見てわかるとおり,「俵型5+4+3」も「俵型4+3+3」も,最大荷重は2です.その該当者は,「俵型5+4+3」は最下段の中央,「俵型4+3+3」は最下段の真ん中(4人並ぶ中の2人)です.「triangle (俵型3+2+1)」の最大荷重1.5よりも大きく,危険性がより高いものとなっています.

(同月追記:http://www.i-repository.net/il/meta_pub/G0000031Repository_01003996よりPDFで読むことのできる紀要論文のpp.29-30に,1988年3月4日の毎日新聞の記事が引用されており,「五人, 四人, 三人, 一人で(死亡した児童)は最下段の右から二人目。 下から三段目まで進んだとき崩れた。」とありました。最下段の右から二人目の荷重は,1.75となります。)
 「三角錐型6段ツートップ」は,以下のツイートの動画より見ることができました.


 0:18ごろにナレーターが「2人の児童が,ピラミッドの頂上へと登り」と言っており,0:32ごろには「6段ピラミッド」のテロップが表示されます.傘に隠れて,完成形の全体は見えていませんが,後方に中腰(鉤型)の姿勢を取っている者がおり,俵型ではなく三角錐型なのが分かります.
 「三角錐型6段ツートップ」は,いくつかの7段ピラミッドの構成と荷重計算の「7段・下5段立体型(48人)」の構成図から,⑬を取り除くことで得られます(⑫は四つんばいではなく,立ちます).図を作りました.左が正面です.
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 「三角錐型6段ツートップ」は,「三角錐型6段」と「三角錐型7段」の中間となる組み方と見なせます.実のところ,構成人数,正面から見えない人の数,最大荷重,荷重1以上の人数について,trigonal6 (三角錐型6段) < 三角錐型6段ツートップ < trigonal7 (三角錐型7段)という不等式が成り立っています.1点だけ注意したいのは,最大荷重で,三角錐型6段ツートップの値は,三角錐型6段の値と非常に近い(差は0.1未満)のです.
 下の段の荷重のかかり方という面では,7段よりも6段ツートップにすることで,かなりの負担軽減を図ることができる,と言うことができます.
 「万里の長城11+10+9」は,https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-095810-8より購入した電子版ではp.70,また『新「組体操」絶対成功の指導BOOK』でもp.70に載っているものです.完成図は次のとおりです.3段のピラミッドが横長になる形状ですが,2段目は中腰です.

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 概要の表ですが,最大荷重が1で,8人というのは,中腰で足は地面につける,2段目の10人のうち真ん中の8人です.それぞれの上に,最上段の2人の(四つんばいになった)左の手足,右の手足が乗ります.最下段の荷重は,最も大きくても0.6です.
 「三角錐型6段ツートップ」と「万里の長城11+10+9」,そして「triangle (俵型3+2+1)」においては,荷重2以上の者がいないのに対し,1988年の痛ましい事故について,不確定要素を含む試算であることに注意しながらも荷重2以上の者を有するのは,「昔の組体操のピラミッド」と「今の組体操のピラミッド」との違いを反映したものであると,見なすことができます.

*1:http://hdl.handle.net/10132/6919経由でhttp://repository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/6919/1/YW40202022.pdfにも,「1988年には愛媛県人間ピラミッドが崩れ、小学6年の男子児童が圧死したほか」という言及があります.吉野義郎氏が教職修士の学位を得るまでのある時点で(おそらく関連研究・事例の調査時),新聞記事を読んでいる可能性が考えられます.吉野氏の指導による(三角錐型)10段ピラミッドが成功し,愛媛県では3段にもかかわらず崩れてしまった件との違いは何だろうかと考えてみたとき,答えが思い浮かび,実際そのことを,ある時点までここに書いていましたが,取り下げることにします.