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「リモートで使用」か「来てもらう」か~卒業研究で利用者評価をする前に

「開発したWebアプリケーションを,他の人が使用し,評価してもらうとなると,2つの選択肢があります.
 2つの方法を順に言う前に,いくつか言葉の確認をします.評価は様々な観点で行う必要がありますが,利用者評価の具体的な実施のことを『評価実験』といいます.その,使ってもらう人のことは,よく『被験者』と呼ばれますが,我々の研究室ではこの言葉を避け*1,かわりに『参加者』とします.利用者評価を実施する側の人は『実験者』と書きましょう.『実施者』は,参加者のことなのか実験者のことなのか紛らわしいので,この言葉も避けるべきです.
 それでは,選択肢の1番目をお知らせします.簡単にいうと『リモートで使用』です.開発したアプリケーションのトップページとなるURLと,使い方や,してほしいことなどを文章にして,メールで送り,使ってもらうのです.
 この場合,参加者は,自分の時間のとれるときに,自分のPCで,実行します.利用者アンケートなんかも,Googleフォームで回答してもらったらいいでしょう.データベースをきちんと作っておけば,同時アクセスも大丈夫なはずです.
 もう一つの方法は,参加者に,研究室内の,実験者のPCまで来て,実行してもらうことです.
 2番目の『来てもらう』方法から先に,その特徴を言いますと,実施の途中にアプリケーションの不具合だとか,参加者が何をすればいいか分からないといった状況になったときに,開発した人がそばにいるわけですから,即座に対応できる点を,真っ先に挙げたいところです.メリットであり,長いほうの『特長』です.
 それから,開始や終了の時刻や,Webサーバなどのアクセス記録に残らない行動をしたときに,それらを知ることもできます.これもメリットと思っていいでしょう.ただし事前に,『実験中は後ろで見ています』と伝える必要もありますが.
 デメリットとして,実験者のところで,PCを適切に用意し管理する必要が生じます.何人かの参加者に実行してもらう場合には,時間を別々に確保しないといけません.研究室内で複数台を用意して並列に実施したり,1台であとに来た参加者に前の人が使っているのを見てもらって,それからやってもらったりするのは,良くない運用です.
 これらのデメリットとメリットから,先に言った『リモートで使用』の,メリットとデメリットを知ることができます.メールひとつで実行してくれれば,自分のところにいちいち来ませんから,PC使用にまつわる管理のことを,考えなくていいのです.その一方で,実行時の不具合への対応方法について,きちんと定めておかないといけません.また記録に残るのは,基本的にはサーバのみとなります.
 いつからいつまでの間に,どれだけの人数に,どんなふうに使ってもらって,何を評価するのかは,どちらの方法をとるとしても事前に決めておきます.そういったことを文書化したものは,『実験計画書』または『実験プロトコル』と呼ばれます.少し時間をとって,作成しておくと,実験中に判断に迷ったときに参照できますし,記載内容を卒論に取り入れることもできます.
 あなたの卒業研究で作り上げたWebアプリケーションは,『リモートで使用』『来てもらう』のどちらの方法でも,実施して問題なさそうに思いますので,どうするかを決めて実験計画の案をWordファイルにし,次回のミーティングで報告してくれますか」