わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

当研究室におけるレポート・論文原稿の基本ルール

1. こちらで添削をする文書(レポート,論文原稿など)について,誤解なく読める形が望ましいのですが,「何となくこう書いてみた」というのも歓迎したいと思います.添削とその対応(ブラッシュアップともいいます)を通じて,文書の質の向上を目指してください.
 完成版の論文のほか,ゼミの配付資料といった,今後書き換えることのない文書の中に,恥ずかしい間違いを見つけて,赤面するのは自分自身です.そうならないよう,時間をかけて,きちんとした形式と内容の文書を作成*1しましょう.

2. 文ごとに,主語と述語を明確にする必要があります.それに加えて,段落ごとに,主体(またはトピック)を意識してください.
 開発したWebアプリケーションの説明をする際,単純に時系列に書くと,ある文の主語はユーザ,次はブラウザ,その次はサーバ,そしてまたユーザ,となってしまいがちです.口頭発表なら,それでも伝わりますが,書き言葉では読み手に混乱を与えることになります.
 そうでなく,ユーザが何を行い,何を獲得*2するかの説明で,一つの段落とし,段落を改めて,アプリケーションの詳細を書くといいでしょう.

3. どこで段落を分けるかについては,「一つの段落に一つのトピック」を原則としてください.この原則のもと,1行だけの段落もあれば,20行を超える文章が一つの段落ということもあります.

4. 段落開始の字下げは,全角空白1文字分です.全角空白を打ち込むのでも,Wordの段落の設定でそのように表示させるのでも,かまいません.

5. 右端が不揃いな文章は,その文章(段落)を領域選択してから,「両端揃え」を行ってください.

6. 一つ文の中で同じ助詞・助動詞が連続したり,一つの段落の中で同じ文末表現が連続したりすることは,避けましょう.
 同じ助詞・助動詞でよく見かけるのは「~の~の~の」「~し,~し,」「~して,~して,」です.同じ文末表現というのは,例えば,「~について述べる.~について述べる.」「~している.~している.」です.単調であり,論文だと十分に推敲していない印象を読み手に与えます.

7. レポートや論文原稿では,「である体」で統一してください.
 例えばアンケート回答などの抜き書きであれば,「です体」の文はそのまま書きます.実験結果として地の文で列挙する際には,もとがです体であっても,である体にします.
 「~だ.」は,である体ですが強い断定の意味になます.(工学の)論文では見かけませんので,使わないようにしましょう.
 体言止めは,(1)箇条書きで使用,(2)すべての項目が体言止め,の2点を満たしていれば,使用してかまいません.

8. 他の人にシステムを使ってもらう実験においては,「被験者」と書かず「参加者」または「実施者」と表記してください*3.また「~していただいた」「~してもらった」といった書き方はせず,参加者が主語の文にしてください.
 とはいえ,すべての文に「参加者」または「実施者」を書くべきではありません(すべてに書くと,読みにくくなります).文章をうまく構成して,主語を書かなくても主語が特定できるような書き方を,練習しましょう.

9. 人称代名詞は,使わないでください.「私」「あなた」「彼」「彼女」「我々」などです.
 自分の研究内容については,「本研究では」で文を始めて主語なしにします*4
 実験などの参加者を個別に見る(それぞれの所要時間や得点などを表にする)際には,英大文字(ABC...)を1文字ずつ割り振ってください.

10. 曖昧な表現を避けましょう.その例として,「のように」のあとは否定形にしない,というのを知っておいてください.
 "Women do not usually like baseball as men do."*5という英文は,「男性は野球が好きだが,女性はふつう野球が好きではない」と解釈できますが,「男性のように女性はふつう野球が好きではない」と訳してしまうと,この文から,男性は野球が好きなのか,好きでないのかが,読み取れないのです.

11. 日本語のフォントは,Wordの標準の游明朝のままでもかまいませんが,もしMS 明朝を使用するのなら,英数字はCenturyにし,文書全体で統一してください.MS P明朝は使ってはいけません.太字は,MS ゴシックとArialの組み合わせです(原稿であれば,MS 明朝とCenturyの太字指定でもかまいません).

12. 英数字はASCII文字(いわゆる半角文字)で表記してください.
 「情報処理Ⅰ」などのローマ数字は,日本語入力から「1」などを打ち込んで変換で出てくる文字にしてください.なお,メールの指示でローマ数字を「I」と書くことがありますが,Wordでは「Ⅰ」にするほうが,きれいに見えます.
 カッコは,プログラムコードや設定ファイルなどに出現するものではなく,開きカッコと閉じカッコの対応がとれていれば,全角の「(」「)」を使用してもかまいません*6

13. 提出前に,PDFに変換し,目を通してください.
 Windows 10なら印刷のプリンター選択で「Microsoft Print to PDF」を選びます.
 誤記のほか,コピー・貼り付けによりフォントが不統一になっているのを見つけたら,Wordファイルに戻って編集してください.

14. 「ひとつ」は,「一つ」と表記するのを原則とします.ただし「1つ」でも(原稿の段階では)支障ありません.

15. 数量をかけ算の式にして,地の文に入れる際には,被乗数と乗数の順序に気をつかうのではなく,積を記載してください.「3人×5回」か「5回×3人」かで迷う必要はなく,「5回×3人=15回」としましょう(「3人×5回=15回」も同等によいと言えます).

本記事作成のきっかけ

*1:「作成する」に対応する英単語には,makeやwriteのほか,「準備する」を意味するprepareがあります.

*2:ただし「~を獲得する.」「~を得る.」「~を見る.」といった文はあまり使われません.Webアプリケーションにおいては,「~が表示される.」が好まれます.

*3:実験する側の人は「実験者」と書きます.

*4:「本研究では」の多用も,文章を単調にしてしまいます.「そこで」「本システムでは」「提案手法では」といった言葉も使うといいでしょう.

*5:https://dictionary.goo.ne.jp/word/en/as/#ej-4595を改変しています.【対比】の例文であり,【同様】とは区別されています.

*6:カッコの中がASCII文字ばかりの場合でも,全角のカッコを認めています.ある学会の論文誌で,英数字を囲むカッコを「(」「)」にしていたところ,校正刷りで全角になったことがありました.