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被験者ではなく実験参加者と書こう

インタラクティブ情報検索システムの評価: ユーザの視点を取り入れる手法

インタラクティブ情報検索システムの評価: ユーザの視点を取り入れる手法

読書感覚で,気楽に目を通しています.見慣れない用語でも,前後を読むと,たいてい,ああ,あれのことだなと,連想するもの(研究室内の苦労だったり,以前に見かけた学会発表だったり)があります.今日中に読み終え,学生に渡し,自分の研究の位置づけを確認してもらおうと思っています.
インタラクティブ情報検索とは,(古典的な)情報検索に,人間の行動を加えたものと言えます.序章(p.2)には,「古典的なIR評価はこのシステムは適合文書を検索できるか,という問いを投げかけるが,IIR評価は人々はこのシステムを使って適合文書を見つけることができるか,という問いを投げかける.」とあります.ここで,IR = Information Retrieval = 情報検索,IIR = Interactive Information Retrieval = インタラクティブ情報検索,です.
序章(p.4)の脚注に,情報検索とは別で,気になる記述がありました.

*6 (訳注)原文はsubjects(被験者)となっているが,IIRの論文では実験参加者の人権を尊重する立場から,実験参加者(participants)という用語を使うことが推奨されている.本書では,原著者の了解を得た上で,例外を除いて実験参加者という用語を使用することとした.
(p.4)

7章では,1段落を設けて,被験者と実験参加者のことを書いてありました(p.76).

被験者(subjects)と実験参加者(research participants)という用語は,いずれも調査実験に承知の上で参加している人々を表すために用いられる.被験者と実験参加者は,研究対象として選択されたユーザ母集団の部分集合である.これらの人々がシステムを使う唯一の理由は,システムを使うことが実験の一部だからである.被験者という用語は実験室環境における研究にもっぱら用いられてきたのに対して,実験参加者という用語は自然主義的研究および定性的研究に用いられてきた.被験者という用語は非人間的だという理由で嫌う人々がいることもまた事実である.

自分としてはこれまで,「実験協力者」という言葉を使用してきました.論文掲載にも,この言葉が見つかります.当該論文の中から文を拾い出すと,「実験協力者は,作業者として経典に関する知識のない大学生5人と,専門家として古写経を専門とする研究者1人である.」と書いていました.
今後は,日本語では「実験参加者」,英語では"research participant(s)"または"participant(s)"と表記するようにし,指導している学生が「被験者」と書いていたら,「実験参加者」に書き換えるよう,指示するとします.
ところで被験者・実験参加者については,今年読んだ算数教育の本にも,次のように書かれていたのでした.

【編集部注記】
ここ数年において,「被験者」(subject)という呼称は,実験を行なう者と実験をされる者とが対等でない等の誤解を招くことから,「実験参加者」(participant)へと変更する流れになってきている。本書もそれに準じ変更すべきところであるが,執筆当時の表記のままとしている。文中に出現する「被験者」は「実験参加者」と読み替えていただきたい。
(『認知心理学からみた数の理解』p.vi*1

手持ちの本は,奥付に「1995年9月1日 初版第1刷発行」「2007年12月20日 初版第4刷発行」とあります.増刷のどこかのタイミングで,上記の編集部注記が入ったものと思われます.

*1:目次の最後です.