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「本実験」は,この実験? 本番の実験?

 ○○さんへ:takehikomです.予備実験の参加者向けの依頼文案を読みました.
 文書内に何度か出現する「本実験」は,混乱を招く可能性があります.文書では,「この予備実験」の意味で使用しているものと,理解したのですが,「予備実験のあとで行う正式な実験」も,「本実験」と言うことができるのです.(「仮運用・本運用」と書いたときの「本」と,同じ意味合いです.)
 「本実験」と表記している最初のところは,「今回の予備実験」に変更してください.他の「本実験」は,「今回の実験」に置き換えるか,正式な実験ではないことがわかる表記にしてください.
 まだ予備実験に取りかからず,文案を修正して,またお知らせください.

なにこれ

 研究室のある学生の研究(システム構築)が順調で,評価実験をするよう指示したのですが,ミーティングを重ねまして,予備実験をしたほうがいいという話になりました.少ない人数を参加者とし,研究の有効性ではなく,システム(それと想定している評価実験)が問題なく実行できるかを確認するためのものです.
 予備実験を含む実験計画書と別に,参加者向けのメール文案を作ってくれていました.一読して,「本実験」はまずいと判断し,連絡をとったのでした.
 連絡する前に,少し時間をとったのは,「仮運用・本運用」を含むカッコ書きです.ここで学生に伝えないといけなかったのは,「本なになに」は「このなになに」という意味のほかに,「本番のなになに」といった意味になり得るということです.
 「このなになに」の意味の「本」は,いくつも思い浮かびます.本論文*1,本研究,本書,などです.
 それに対し,「本番のなになに」になる,「本実験」以外の用例を見つけるのに苦労しました.検索に頼った結果,ようやく「本運用」の語を発見し,対義語は「予備運用」ではなく「仮運用」だよなと確認してから,取り入れたのでした.
 いま考えてみると,辞書を引くべきでした.例えばhttps://www.weblio.jp/content/%E6%9C%ACで見ることのできる,デジタル大辞泉に,いくつも二字熟語が載っていました.「このなになに」の項目と用例は「4 当の。この。わが。「本案・本官・本件・本日・本書・本人・本邦」」なのに対し,「本番のなになに」は直後の「5 正式の。本当の。「本意・本妻・本式・本名・本物(ほんもの)」」です.
(公開した翌日に,記事タイトルを「予備実験に本実験」から変更しました.)

*1:ただしこの語も,「この論文」の意味のほかに,「(学会によっては口頭発表の前に提出する予稿を『論文』と称することもあるけれど,そうではなく)査読付きの論文」という意味が思い浮かびます.それぞれの意味で「本」を言うときのイントネーションが異なります.このイントネーションの違いは,「本実験」を言うときも同様です.