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全国学力・学習状況調査の算数問題を対象とした検索システムで,何ができるか

「本システムの使い道の一つを紹介します.左に表示させているのは,プレジデントオンラインのページからの抜粋です.そこでは,辺の長さが3cm・4cm・5cmの直角三角形について,面積を求める式と答えを書くという,2021年度の全国学力テストの算数問題に対し,正答率が55.4%だったのを,『激震が走りました』と表現しています.
 これを見たときに,最初に思ったのは,50%台の正答率は,全国学力テストで何問か報告されているはずだけどなあ,でした.
 開発した検索システムで,調べてみました.右に表示させている通りですが,詳細検索を選んで,正答率を『55』以上『56』未満に設定します.それ以外は,キーワード欄を含め,とくに指定はしていません.
 それで,ボタンを押すと,正答率55%以上56%未満が,(平成19年度から令和4年度までの574問のうち)8問あることが見てとれます.表の下から2番目が,該当の問題です.詳細の右のPDFアイコンをクリックすると,問題を確認できます.解答類型などはこちらです」

Q&A

何をしたの?

 2023年電子情報通信学会総合大会で,「全国学力・学習状況調査の算数問題を対象とした検索システムの構築」と題して,3月7日9時からのセッションで成果発表をしました.

システムを開発したの?

 データベースの設計と構築,検索システムの開発,実験による評価は,第2著者が卒業研究として実施しました.私は適宜指導し,今回,学外発表を取りまとめました.

検索システムのURLは?

 すみません,非公開です.

574件って,少なすぎない?

 平成19年度から令和4年度までの全国学力・学習状況調査の小学校算数の問題は,この数になりました.小問は別々に数えており,計算問題も,一つ一つ別カウントです.

科研費の研究?

 いえ,助成は受けていません.

学術的な意義は?

 全国学力・学習状況調査の問題や報告書は,国立教育政策研究所 教育課程研究センターが公表しています.
 その内容をもとに,例えば「公開されているすべて(小学校算数の問題)のうち正答率が特定の範囲になる問題」を探すために,すべての年度のPDFファイルを開いて見ていくのは,非常に手間がかかりますし,漏れも生じるかもしれません.
 検索ニーズを想定して設計・構築を行い,効率良く,漏れなく重複なく,見つけられるようにした(評価実験を通じて確認した),というのが,今回の発表内容の意義となります.

正答率55%以上56%未満だったら,Excelファイルでも求められるのでは?

 「正答率が特定の範囲」に限定すれば,それでもいいのですが,正答率だけでなく,問題区分(いわゆるA問題・B問題,平成31年度以降は区分なし),学習指導要領に記載されている小学校算数のAからDまでの領域,解答形式などを組み合わせて,検索をするとなると,スプレッドシートでは難しく,DBMSとWebサーバを用いて実現するのは,自然な発想となります.
 スプレッドシートと,スクリプトファイルの組み合わせというのが,代案として考えられますが,そこまでしたい人は,原文となる問題や結果からの情報抽出も,スクリプトを自作して,やってのけるのではないかと思います.今回の研究で想定している利用者層とは異なります.

これであなたも,小学校算数の専門家?

 そんなことはありません.今回の発表は,「教育工学」のカテゴリで申し込みました*1が,むしろ「情報検索」に貢献するものと考えています.
 ただし,どのような(算数の)問題を取得できるとよいかなどについては,全国学力テストだけでなく,算数の問題を読み,ブログ記事にしてきた経験を,反映させています.
 関連情報を一つ,挙げておきます.冒頭の画像の右側の表の最後の行は,8÷4ではなく4÷8~令和3年度全国学力テスト報告書より - かけ算の順序の昔話の件でした.

*1:セッションのいくつかの発表は,小学校のプログラミング教育などに関するものでで,関心を持って聴かせてもらい,質問もしました.