「(木工用ボンドを手に取り)よし,ここをボンドでくっつけよう」
「すえの子よ…」
「なに,パパ?」
「テーブルな,まだ晩ごはん食べてる子がおるんやけど」
「うちは食べたよ?」
「えっとやな…食事してる横で,そういう,手ぇとか肌についたらあかんようなことは,したらあかんねん」
「….ま,ええやん.あとの子,もう食べ終わんねんから」
「(呼び捨てか…)う~ん,ほなまあ,ええことにするか.っと,あとの子,あっちへ行ったぞ」
「これやねんけどな,パパ」
「ん? ボンド,出ぇへんのか」
「そうやねん.先のキャップは取れるんやけど,力を入れても,ボンド出てこやんねんよ」
「中は,入ってんか?」
「(ボンドを揺すりながら)入ってると,思うんやけどなあ…」
「出るところが,詰まってんか?」
「そうやと思うねん.パパ,開けてくれる?」
「(受け取って)よっしゃ.ここ,回してみるぞ…いたっ,これは固まっとるんで,回らんぞ!」
「なんとかできやんかなあ」
「んん…乾いたタオルかぁ.これを巻き付けて,回すと…う~ん,これでも回らんなあ」
「あかん?」
「パパで開かんかったら,家族の誰も開かんやろな.百均へボンドを買いに行くか,あるいは,もう少し粘るとするなら…」
「ハサミで,切って開けたら?」
「あ,ママか.その手もあるな.ほなハサミは…」
「持ってるで! 家庭科の実習で,セット買ってん!」
「え…裁縫用のハサミ!?」
「(取り出す)切れやんかなあ?」
「(受け取って)いや,こんだけ刃渡りがあったら,たぶん切れると思うんやが…」
「…」
「けどなあ,ハサミの先に,ボンドが,ついてまう可能性があるねん」
「ちり紙でふいたら,あかん?」
「ほなそうしてみるか.切ってくで.こういうときは輪切りやのぉて,1周の3分の1くらいを,ハサミの先端で…よし,切れた」
「いける?」
「ここ切れたら,1周,間違いなく切れるやろ,けどほら見てみ,ハサミの先っちょに,白いの,ついたやろ」
「ほんまや…あとでふくってことで」
「せやな.もう1回…うん,3分の2,切れたな」
「あ,パパ,いいハサミ持ってるぅ」
「あとの子よ,このタイミングで戻って来たか」
「あのね,チューペットを真ん中で切りたいねん.ちょっと借りるよ(奪う)」
「こらこらこのハサミは裁縫用やねんぞ.それとな,ハサミの先端は使うな,まだふいてないからな.刃の根本で…そう! それやったらええわ.ハサミ返してや」
「は~い」
「ところで,チューペットを2分割して,2本ともお前,食うんか?」
「ちゃうよ.すえの子ちゃんにあげるねん」
「あっ,ありがと~」
「(ここでもお姉ちゃんとは言わんのやな)ではボンドを…ほい,切れた!」
「やった!」
「ハサミはパパのほうで拭くよ.お前,ボンド使いや」
「どもども.けど…かたむけても出やんなあ」
「割りばし持って来て差し込んでみな.ほんでボンドを取って,貼りたいところにつけたらええやん」
「なるほど,パパ,頭いい~」
「あとの子よ,褒めて何も出ぇへんぞ」
「わかってるってぇ」
「割りばし取りに行ったすえの子よ,ボンドにフタするんに,アルミホイルと輪ゴム,持って来るんやで!!」