「ただいま~」
「ん? 駐車場に車がなかったから,ママがおらんのは分かってるけど,子どももおらんのかな」
「おかえり,たけちゃん」
「お義母さん,ただいまです.子どもは?」
「中学校組は,まだでねえ,すえの子ちゃんは,お稽古事で,ママがお迎え行ってんねん」
「はあわかりました.じゃあ2階へ行くか…」
「待ってたけちゃん,あのねえ,ビンのフタ,開けてくれへんかなあ」
「どれでしょうか…」
「テーブルに置いちゃあんねん」
「はい…あ,これですね」
「そうやねん,ご近所さんから,水煮ねえ,ビンごと,いただいてんけど,堅ぉて開けれやんのよお.たけちゃんなら,いけるかなって」
「やってみますね.まずは素手で…うんビクともしない」
「次はビンを斜めにして,落としながら回す感覚で…これもダメか」
「タオルか何か,巻いてもアカンかな?」
「そうですね.リュックサックから,タオルの汗くさくないところを巻いて,えい…反応なしかあ」
「火に炙ってみるう?」
「いえちょっと…あ,思い出した」
以前に開けたときのことを,思い出しました.大きめのマイナスドライバーを,金属製のフタのところに,下から差し込んだのでした.フタが少し動いたのを見てから,回すと,労せず開きました.
テーブルにはドライバー(ネジ回し)は見当たらず…
かわりに,糸切バサミがありました. この刃の先を,下から差し込むと…カパっという音がしました.空気が入り込み,フタが少し膨らみました.
中の水が漏れないのを確認してから,刃物を置いて,フタを回すと…うまいこと外れました.