「今回,130を越えるレポート答案を読んでいきました.PDFファイルを開いて,学生番号と,取り上げている2つ以上の大規模Webサービスの名称を見つけて,Excelファイルに書き出しました.次に答案を先頭から終わりまで読み,ときには読み返したりして,A・B・Cいずれかの評点をつけました.
これだけの数の答案を集中して読むのは,久しぶりでした.そしてこの作業を通じて,『良い評価をつけたくなる答案』と『良い評価にはできない答案』があることにも,気づきました.
良い評価をつけたくなる答案について,もっとも重要なのは,大規模Webサービスとして運用するために採用している,ソフトウェアなどの取り上げ方です.その『名称』,『概要(それは何なのか)』,そして『用途(どのように使われているのか)』を,正しく簡潔に記述していることです.
あとは,内容というよりは体裁というべきかもしれません.『適切に章立てを行い,番号・見出しを付けていること』と,『箇条書きを,効果的に使用していること』を,挙げることができます.
答案の本文部分が3ページ未満であれば減点すると,予告していましたので,答案はたいていが4~5ページ,多いものは10ページを超えていました.その内容の理解にあたっては,全体として何を述べているのか,セクションごとに,段落ごとに,そして文ことに,何を述べているのか,また,文書全体と各セクション,セクションの中の各段落,段落の中のそれぞれの文が,適切に配置されているのかを見ていきました.記述・配置がしっかりできている答案,英語では“well-organized”という単語がぴったりなのですが,それを読み取れる答案が,評価を上げるレポート答案なのです.
ここまで述べてきたことの反対が,評価を下げるレポート答案です.再び,大規模Webサービスとして運用するために採用している,ソフトウェアなどについて,採用しているソフトウェアなどに『表記ミス』があったり,『概要(何か)』と『用途(どのように使われているのか)』の一方または両方について記載がなかったりしたら,うーんまずいぞと,読んで思うわけです.
『箇条書きを,効果的に使用している』の反対は,『箇条書きを使わない』ではありません.『箇条書きの使い過ぎ』です.使い過ぎは,レポートの体をなしていないと,判断することになります.答案の前半,1つ目の大規模Webサービスの説明は,しっかりした文章で書けているのに,後半,2つ目のWebサービスになったら,箇条書きになってしまった,という答案がいくらかありました.そういった答案について,A・B・CのうちAやBと評価できるものは,ありませんでした.
また別の,評価を下げる要因を,答案から目にする機会もよくありました.『です・ます』の使用です.『です体』あるいは『敬体』とも言います.
文章全体が敬体であるほか,『である体(常体)』で書かれていて,1か所だけ『です・ます』になっているような文章も,評価を下げます.推敲不足なのです.そして昨今では,ChatGPTに代表される生成AIを使用して,出力を切り取ってそのまま貼り付けたのかと,疑問を持つことにもなります.ちなみに箇条書きばかりの答案も,生成AIの使用(コピー・貼り付け)が疑われることとなります.
箇条書きの使い過ぎも,敬体の使用も,レポートや論文などの文書においては,“well-organized”の反対,“ill-organized”となってしまいます.
ところで,数は少なかったのですが,驚いたのは,『ダブルスペース』による答案です.行間が空きすぎていたのです.
ダブルスペースにするのは,原稿を印刷して,指導教員や上司に見てもらい,各行・各語などに赤で要修正などを書いてもらうときに使用する書式です.今回の課題では,受け取った原稿にこちらで赤を入れてお返しするということはしません.ダブルスペースは,ページ数を増やすために行った姑息な手段ではないかと,思わずにいられませんでした.
この科目の講義は本日が最終回で,来週は試験です.大学院生向けの第1クォーターの科目として,お知らせしたかったことの一つは,大学院生としての在学期間中,授業や,研究活動において,まとまった長さの文章を書く機会が頻繁に発生するということです.学部生との違いは,文章量もさることながら,むしろ書いた中身,『質』にあることに留意してください.書きっぱなしではなく普段から推敲するのは,当たり前であり,文章をより良くするための外部ツールを適切に活用しながら,先生方に,同じ学年や後輩に,先人からの学びや,自分が今やっていることを,分かりやすく誤解されないよう表現する練習を積み,修士論文を完成させることを,期待したいと思います」