わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

研究室は有限集合,研究課題は無限集合

いよいよ今日から,学科の3年生研究室配属イベントが始まります.
どこに行きたいか迷っている学生に参考になるか,ならないかは分からないけど,エールをこめて.
つつがなく4年生になれば,卒業研究をすることになります.課題を一つ設定して,1年間,取り組むわけです.
ここで,研究課題と研究室の関係を,集合を使って説明してみることにします.
予備知識として,要素数が有限なら有限集合,有限でないなら無限集合と呼び分けます.一つの無限集合は,有限個の無限集合の和集合として表せますが,有限個の有限集合の和では表せません.さて…
「研究課題」全体からなる集合は,無限集合です.というのも,適切に定式化されたwell-formulated一つの問題を解決する方法を求めれば,その問題がカバーする無限個の個別問題を解決できるからです.「一つの問題」も,「個別問題」も,研究課題になり得ます.(研究課題全体からなる集合が可算無限か不可算無限かは断言できませんが,個人的には不可算を予想しています.)
情報分野に限っても,研究課題全体からなる集合は,無限集合です.
そしてあなたは,その中の1点を選択し,指導教員から「研究として妥当か」「実施可能か」といったチェックを経て,その課題で卒業研究を実施することになります.まあもう少し先ですが.
研究室配属に関して,無限集合でない重要な集合があります.「配属可能な研究室(学生から見ると,選択可能な研究室)の集合」です.これは有限集合です.毎年増減はありますが,年度ごとに,研究室の数は確定しています.配属対象学生も,有限集合です.学生と研究室との配属関係を,定員などの制約のもとで,一つに定めるのが,研究室配属です.
各研究室で「取り扱える研究課題の集合」*1は,有限集合でしょうか,無限集合でしょうか? これは,無限集合とみるべきでしょう.
ただし,任意の二つの研究室を取り上げたとき,それぞれで取り扱える研究課題の集合には,共通部分があるものです.まったく重ならないというのは,まれでしょう.
一定の性質を持つ研究課題の集合は,「研究テーマ」,あるいは単に「テーマ」と呼びます.テーマも一般に無限集合です.あるテーマに対して,それを取り扱える研究室は一つしかないということは,あるかもしれません*2
ここで,研究室を一つ定めたときに,その「研究室で取り扱える研究課題の集合」を規定することができるかは,難しい問題です.私自身,自分の研究室について,有限集合ではないと思いつつも,過不足なくその集合を書き下すことはできないなあと感じています.
今日の午前中に,各教員が短時間で研究室紹介をしていきます.また午後にはオープンラボで,より詳しい研究室の活動をお伝えします.しかしこのイベントにおいて,教員が発する情報というは,有限のサイズにならざるを得ません.
逆に,先生による有限長の情報から,無限集合である「研究室で取り扱える研究課題の集合」を推定することができるでしょうか?
以上の説明で,研究の奥深さを感じることができましたら幸いです.

*1:より厳密には,研究室を任意に固定したとき,「その研究室で取り扱える研究課題の集合」と書きます.まあ今日の議論で,厳密性を追求しすぎるのも良くないのですが.

*2:さらに言うと,ある研究課題もしくはテーマに対して,それを取り扱える研究室が学科にないという可能性もあります.これは,学科の各研究室で取り扱える研究課題の集合の和集合が,情報分野の研究課題全体の集合よりも真に小さいことを意味します.