わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

教える,学ぶ

「分かりやすい表現」の技術―意図を正しく伝えるための16のルール (ブルーバックス)』の著者の新著です.
「教え方」の新書本として,アドバイス,エピソードの一つ一つが明快です.
教える技術の5番目,「腹八分目」は,実際そうだよなあ,そうなんだけどなあという思いです.『自分自身にルートを見つけさせよ』(p.84)というのも,授業でも研究室でも,忘れがちです.
あえて欠点を挙げると,「整理しすぎ」でしょうか.

理系アタマのつくり方

理系アタマのつくり方

入社2年目の「僕」が,「ヨッツン」という名前の人形を輸入販売するプロジェクトのリーダーを務めることになり,「中川さん」という上司に相談を重ねて,体系的な問題解決方法を学ぶというストーリーです.
「理系」というものの,複雑な数式は一つも出てきません.第5章に,概算とそれを使った判断の手法が書かれているくらいです.
ですが,確率の掛け算,分類すること,仮説を立ててやってみること,PDCAサイクルなどは,エンジニアリング能力の養成にも役立つことでしょう.逆に大学で工学教育に携わる者としては,JABEEのエンジニアリング能力で挙げられている各個別の能力について,社会人になって,大学の専門分野と違う職種に就いても,このように役立つんだ,ということを伝えていきたいものです.
そうでした,問題解決というと,客観的というか,冷徹な感もありますが,本書では文系アタマと理系アタマのバランスが重要であることを指摘していること,そして「理系アタマ」の象徴である,上司の中川さんが,自分で欠点を明らかにしていることが,人間味あふれたストーリーに仕上がっていると感じました.

ifとelseの思考術 プログラマ脳育成講座

ifとelseの思考術 プログラマ脳育成講座

プログラミングの本です.プログラミングのセオリー,なのだけど - わさっきで挙げたのと同じ著者です.軽くWebを見回すと,うーん,必ずしも良い評判ではなさそうです….
第2章まではVBScript,第3章以降ではCを使用して,プログラミングの心得を解説しています.サンプルコードについては,「#defineの並びは,enumにしたほうがいいなあ」と感じたくらいでした.
小さなツッコミを入れておきましょう.pp.83-86で,「音読しながら打ち込む」ことの有用性を説いています.これは賛同しますが,例の中で,「"」「,」「;」などの記号を読み飛ばしているのは,危ういです.コードを見て人とコミュニケーションをとるときはもちろん,自分で書くときにも,記号をおろそかにすべきではないでしょう*1
さてこの本,自習書に仕立てていますが,内容は「教え方本」です.第4章(プログラミング入門講座で指導する方法)が顕著で,『プログラミングを教える側の視点で話をしますが,プログラミングを学ぶ人も学習方法や考え方のヒントをつかめるはずです』(p.93)とあります.
学生が読んで,難解に感じる表現はほとんどないとしても,考え方は,すぐには頭にしみこまないように思います.
教員としては,なるほどそこでつまずくのかとか,授業を終えた学生が学びたいのはそこかなとか,得るところが多いのですが.

関連:

*1:Rubyでがりがり書いてから,授業準備にCのコードを書くと,セミコロンやら,ifのカッコやら忘れまくり….