わさっきhb

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ブザーが鳴ると,ドアが開閉します

項目間の関係を,このように有向グラフで図にするというのは,研究室内で考察するにも,また外の専門家に見てもらってアドバイスを得るにも,いいことだと思います.
ただですね,その有向辺が多いなあとも思います.さらに削れないか,です.
そのヒントとなりそうな考え方の一つが,擬似相関です.
例えばですね,バスの,入口のドアのそばにですね,「ブザーが鳴ると,ドアが開閉します」と書かれていまして…
ここで「ブザーが鳴る」ことと「ドアが開閉する」ことに,因果関係があると言っていいかどうかです.
あ,機械の整備不良で,ブザーが鳴ってないのにドアが開閉しただとか,逆に,ブザーが鳴ったけれども,ドアが開閉しない,といった可能性は,考えなくてかまいません.
それにしても,なぜ「ブザーが鳴る」と,「ドアが開閉する」んでしょうね…
と真剣に考えなくても,バスに乗り慣れていれば分かるように,これは運転士さんが,ドアの開閉を操作しているのでした.具体的には,ドア開閉のスイッチがあって,運行中は《閉まる》になっているんだけど,バス停に着いたら,《開く》にすることで,まず1秒程度,ブザーが鳴って,それからドアが開くように,機械制御がなされているのですね.
そうすると,こんな言い方ができます.「スイッチを《開く》にすると,ブザーが鳴る」という,因果関係があります.そして,「スイッチを《開く》にすると,ドアが開く」というのも,因果関係と言えます.実際にドアが開くまで,少し時間がかかり,そしてその間にキャンセルできるといえばできるのですけどね.
「ブザーが鳴ると,ドアが開閉します」というのは,この二つの因果関係によるものです.客に注意を促すメッセージとしては,要は「ブザーが鳴ったら,ドア付近に注意」という意味で,特に,間違った表現ではありませんが,「〜すると」という,時間的な順序関係があるからといって,因果関係があると考えてはいけないのです.
気になったのは,見せてくれた図の中から,この種の「擬似相関」を見つけ,それを取り除くことで,もっとすっきりした図になるのではないか,ということです.

元ネタ

研究グループの小ゼミで,擬似相関の可能性に関するコメントをしたのですが,そこで挙げた事例が面白くなかったので,この日記には書かないでいました.
本日のエントリで使用した例は,その後読んだ『大学院生のためのアタマの使い方』のp.87にあるものです.少し戻ると,以下の記述もありました.

ふだん我々は,何気なく因果関係ということばを使っていますが,もともとは原因と結果の関係であって,それが成立するには次の三条件が必要なのです.

  • 時間的順序:原因は結果の先に発生している.あべこべになっていないか?
  • 共変関係:相関関係がある,片方が変われば片方も変わっているか?
  • 第三変数の排除:原因以外の要因が影響していないこと,他の原因はないか?

(pp.85-86)

wikipedia:擬似相関では,X,Y,Wという文字を用いて,因果関係と実はそうでないものが,分かりやすく表現されています.