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「とは」から始めるコミュニケーション

コミュニケーション能力向上のためのゼミ,「とはゼミ」を構想妄想しました.

背景

  • 就職難と言われています.そんな中,内定を得るには,面接で「この学生に来てほしい」と思ってもらえるような,言葉のやりとりが不可欠です.
  • 授業やゼミといった,教員-学生のコミュニケーションを通じて,次の二つの「残念なこと」をときどき感じます.一つは,こちらの発する重要なことが伝わっていないなあということ.もう一つは,そこにあと一つ情報を加えれば,メッセージが鮮明になるのになあということです.
  • たくさん会話をすれば,コミュニケーション能力が上がる,というものではありません.他愛もない「おしゃべり」と,就職活動の面接のやりとりとで,求められること,自分のすべき行動が異なっているからです.
  • ある言葉に対して(おそらく,どんな言葉に対しても),自分が持つ知識やイメージは,必ずしも相手と同じではありません.また,そもそも相手が知らなければ,知ってもらわないと,話が進めることができません.
  • 言葉の意味を理解してもらい,類似したものとの違いを確認し共有する,そのためのキーワードは,「〜とは」です.「なになにとはこれこれのことで〜」と口をついて言えるよう,練習を重ねることで,コミュニケーションの媒体である日本語と,日本語に限らない手段を含むコミュニケーションについての,豊かな知識と確かな技能を持つことができるのではないか,と考えました.
  • そんな練習を大学で行うなら,ゼミ形式がベストです.このようにして,「〜とは」に着目し,物事を説明できるようになるゼミ形式のレッスンを企画するに至りました.

目標

  • 物事を過不足なく日本語(書き言葉・話し言葉)で説明できる能力を養います.
  • ゼミ形式で実施し,各自の情報を持ち寄って,小さな負担で幅広い知識を獲得します.
  • コミュニケーションの難しさと楽しさを学びます.

実施時期と対象者

  • 後期の10〜12月に実施します.人数が多ければ,全員が集まれるコマというのも見つけにくくなるので,週2コマにして,どちらかに参加すればよいとしたいところです.
  • 1,2年生は自主演習として実施します.所定の時間をかけ,ゼミ参加とその準備・フォローを行うことで,1単位になります.
  • 研究室の3年生とM1も,就職対策として出席してもらいます.

実施方法

以下の「とはゼミ」は,数回かけて実施するゼミ全体ではなく,1回分を指します.

  • あらかじめ,各学生は与えられた「お題」で,そのお題を説明するための文章を作っておきます.
    • 書き出しは,「(お題)とは」とします(お題がLinuxなら,「Linuxとは」となります).
    • 分量は,A4で1枚程度とします.調査・執筆・推敲あわせて2時間くらいで行うものとします.
    • 文章について,既存文書のコピーを(どこまで)してよいかについては,別途定めます*1
  • とはゼミを始めるにあたり,参加者分の文書を印刷しておきます.
  • 歓談(意外と重要)のあと,ゼミの開始.発表者が順に,作成した文章を読み上げます*2
  • 発表の一つ一つに対して,教員や他の学生が,日本語表現や分かりやすさについて,質問・提案をします.
  • とはゼミ終了の前に,次回の発表者に「お題」を割り当てます.
  • 各報告者は,とはゼミ終了後に,質問・提案をもとに内容を書き直し,教員に送ります.

勝手にQ&A

  • 会話よりも文書(話し言葉よりも書き言葉)を重視するのですか?
    • そうです.というのも,「〜とは」を話すのは即興で(事前の準備なしに)できるものではなく,入念な調査と,その整理が不可欠だからです.回数を重ねることで,調査・整理は当たり前となり,どこに注意して話すと効果的かというのを,学んでもらいたいと考えています.
  • 作ったお題だけにしか,「〜とは」が言えなくなるのでは?
    • 自分なりに苦労して取りまとめ,とはゼミで発表して批判を浴びたものについては,より深くその対象を知っているわけですから,さらに何を言えば伝わりやすいかを考える「余裕」ができます.よく分かっていない言葉について,話せと言われたら,関連する語句や概念を頭から引っ張り出して,組み立てるしかありません.そのような発想の支援も,ゼミの議論の中で培っていきたいと考えています.
  • 要領よく文章を作り,要領よく話せる人を養成するのですか?
    • いえ,「課題に対して客観と主観,具体と抽象をうまくバランスさせ,モノを作り,アウトプットできる人」を目指します.
  • うまく自己紹介ができるようになりたいのですが,どうすればいいでしょうか?
    • 「自分とは」は,あらゆる「〜とは」の中で究極の課題だと思います.まずは他の人が容易に検証可能な,授業や専門の用語で「〜とは」を作って技能を磨くのがいいでしょう.
    • とはゼミでも,最終段階として,「自分とは」(自己紹介)を実施したいものです.ただしそれを言えれば終了というのではなく,とりあえず今の知識や能力で自分を規定するという意味です.就職活動における自己紹介と,社会人5年目の自己紹介は違うはずで,とはゼミ終了時の「自分とは」は,そういった自己の変化を知るためのスナップショットにもなりそうです.
  • ゼミの報告は,公開するのですか?
    • しません.ゼミ参加者だけの資産とします.別の理由として,文章の中に,発表者の個性,ときにはプライバシーに関するような記述も認めたいと考えている,というのもあります.
  • 先生の学部の学生ではないのですが,参加できますか?
    • 学務上,また私の能力上も,ご勘弁ください.かわりに,自分で「〜とは」から書き出す文章をいくつも作って(例えばブログに)公開し,アドバイスをもらって鍛えるという方法は,いかがでしょうか.

*1:「知識」として互いに確認・共有するためには,典拠なくすべてが自分の言葉というのはまずく,ある程度のコピーがあった方がいいと考えています.定義とは別に,お題に対する発表者の個性を示せばいいのです.

*2:文章作成者=発表者が基本ですが,≠のやり方,すなわち他の人が読むことで,より分かりやすい表現を探るというスタイルも,ありだと思います.