理系の企画力!-ヒット商品は「現場感覚」から (祥伝社新書167)
- 作者: 宮永博史
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2009/07/28
- メディア: 新書
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ただ残念なのは,「第4則 はじめにコンセプトありき」を読むと,コンセプトとは目標のことだと,誤解されかねないこと.
自分なりに,コンセプトの意味を,言葉にしたことがあります.
「あなたの研究の目的は,何になりますか?」「設計思想を教えてください」「コンセプトを明確に!」… 言っていることは同じです.やったことを手短に,かつ他の研究やモノづくりやデザインと区別するように表現することが課されているのです.その結果として表した語句は,言ったら終わりではなく,文字列(ラベル)となり,手がけたことの妥当性を確認するため,そしてリリース後も「何するものなのか」を簡潔に表したものとして流布されます.
大学生活で学んでほしいこと - わさっき
ここで少し,研究室の話を.月曜日の紹介スライドで,ディジタルアーカイブに関して「千年前の古文書を今,パソコンで」と書き,色を変えて提示しました.これが自分なりのコンセプトの一例です.
話を戻して,このコンセプトは,「デザインコンセプト」と書くこともできます*1.また英辞郎で「設計思想」を引くと,design conceptと出てきます.
あと,conceptイコール概念,でもありません.conceptのほかに,notionも,概念という意味の英語でよく見かけます.特に,「Xの概念(Xという概念)」に対する表現にthe concept of X,the notion of Xの2種類がありますが,前者ではXが議論の対象となる重要な(新しい)「概念」なのに対し,後者はXは一般によく知られている「概念」という意味で,使い分けがなされているように思います.
もう一つ余談として,概念設計をconceptual designと訳します.このcenceptualは,conceptの形容詞形ですが,上で書いたようなconceptとは異なります.すなわち,必ずしもコンセプトを明確にするという作業は行われません.これは,設計の段階(フェーズ)の一つです.一般に,conceptual design, logical design(論理設計),physical design(物理設計)の3段階に分け,その最初の段階という意味合いです.
*1:『理系の企画力』では,しばしば「製品コンセプト」という表現を目にしました.これを「製品デザインにおけるコンセプト」と書き換えることはできそうですが,「製品デザインコンセプト」とするのは,デザインが前にかかるのか後ろにかかるのか分かりにくいので,そう書きたくはありませんね….