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理由・タイミング・効能・計画案・戦略と戦術・解答 〜 プレゼンテーションの極意

プレゼンテーションの極意

プレゼンテーションの極意

隣の研究室の学生から2度リクエストがあり,私も内容に興味があったので,Amazonマーケットプレイスで購入しました.1時間とかからずに読むことができ,今はその学生に貸しています.
著者は,大学で教鞭をとってらっしゃるのですが,デザイナーとのこと.
出版された時点で,すでに要注意語だったはずですが,「プレゼンテーター」を多用しています.「プレゼンター」と書くべきです.気になる人は一応言っておくが、そんな英単語はない [プレゼンテーター]をご覧ください.脱線しますが,コメントする人については「コメンテーター」です.しかし「コメンター」という表記もあり得ることは,過去に取り上げました.
数年間,あらゆるものを「設計(デザイン,エンジニアリングデザイン)」という観点で考えるようになった者として,以下の記述を無視するわけにはいきません.プレゼン準備の心構えが,6項目で簡潔に表現されています.

プレゼンテーションで述べていくべきことを列挙しておこう.

  1. なぜそのアイディアを実現したいのか(企画理由)
  2. なぜ今この時期なのか(タイミング)
  3. そのアイディアの実現によってどのような効果と効用があるのか(実現による効能)
  4. 具体的にどのように実施していくのか(具体的計画案)
  5. どれくらいの予算・準備がかかるのか(実現までの戦略と戦術)
  6. 実現にあたり解決すべき問題・課題・議題は何なのか(回答・応答・解答)

(p.60.箇条書きの数字は原文では丸囲み数字)

意外と忘れがちなのは,2番目の「タイミング」でしょうか.構想するのと同じものが過去に作られていたら,インダストリアルデザインはもちろん,研究においても基本的に失敗です*1.その一方で,新しすぎて周囲が理解できず,実用性に欠けるという危惧も,考慮しないといけません.
もう一つ,興味深い記述がありました.

卒業論文を控えた学生たちに必ずアドバイスする.
「論文の書き方」という類いの本を最低3,4冊は読むことを勧める.そして,読んだ後に,そのようなハウツー本は,すべて捨ててしまえ,と言うことにしている.矛盾しているように聞こえると思う.
しかし,本に書いてあることを信用しないこと.一度すべてを読んだ後に,それを自分の中で咀嚼し,自己流のやり方をなんとしても見つけ出すことである.(略)
(p.155)

私も,卒業論文ではありませんが,経験があります.気合いを入れてプレゼンをするときは,プレゼン指南書を見つけて買っていました.英語論文の書き方が確立していなかった時期は,その種の解説書をよく読んでいました.
そして今は,新書を読むのと同じ感覚で*2,軽い気持ちで買うことはあります.
なので「本を信用しない」「自己流のやり方を見つけ出す」については賛成です.
ただそうはいっても,その自己流が何に影響して形成されたのかを,自身が確認し,また周囲に示すために,本を持っていたいものです.なので「捨ててしまえ」には同意できません.
まあそんなことを考えているので,将来2度と開く可能性のない本がたまっていくのですが.

*1:やり方は昔からあるものを使い,創意工夫で,「改善する(数値的に良くする)」という研究は,もちろん可能でしょう.

*2:そういえば学生時代,「フィーリング」という言葉をよく耳にしました.死語ですかね.