研究者なら知っていて当たり前,という用語があります.
本日は,その意味を説明するかわりに,用例と,その言葉を使わない言い換えを,並べてみることにします.
項目の終わりに,別称や注釈を書いています.
アクセプト
用例:3月に投稿した件,アクセプト来ました.
言い換え:3月に論文として投稿した件の査読が通り,掲載となりました.
- アクセプト = acceptance = 受理 = 採録 = 採択
- 査読 = 審査 = レビュー = review
コンディショナル
用例:3月に投稿した件,コンディショナルです.
言い換え:3月に論文として投稿した件の返事が来ました.そのままでは不可で,条件を満たすよう,原稿を書き直して再投稿しないといけません.
リジェクト
用例:3月に投稿した件,リジェクトでした.
言い換え:3月に論文として投稿した件,査読の結果,落ちました.
- リジェクト = rejection = 却下 = 棄却
アック
用例:先週投稿した分,アックは?
言い換え:先週,論文として投稿した件,受け取りましたという連絡は来ましたか?
- アック = ACK = acknowledgment = 受領通知
エディタ,レビュア
用例:論文の結果は,エディタ名でやってきます.投稿者からは,レビュアが誰かは分かりません.
言い換え:学術論文の採否通知は,編集委員の名前でやってきます.投稿した論文を丹念に読み込んで,採否判定のほかアドバイスをくれる人が,誰なのかは教えてくれません.
- エディタ = editor = 編集委員
- レビュア = reviewer = レフェリー = referee = 査読者
ドラフト,プロシーディング,フルペーパー
用例:このレベルのドラフトでは,フルペーパーはもとより,プロシーディングに載っても恥ずかしいなあ.
言い換え:今の内容では,査読が通って本論文となるのは到底無理で,査読無しの発表で予稿集に載っても,恥ずかしいですよ.
- ドラフト = draft = 原稿 = 草稿 = 未投稿の文章
- プロシーディング = proceeding = 国内会議・全国大会・国際会議に掲載された論文
- フルペーパー = full paper = 本論文*2 = 査読付き学術論文
- 予稿集 = プロシーディングス = proceedings
フルペーパー,ショートペーパー,ポジションペーパー
用例:国際会議に出したの,フルペーパーで通った? ショート? じゃなくて,ポジションペーパーってのがあるのか.
言い換え:国際会議に出したものは,ページ数削減なしで採択となりましたか? 制限がつきましたか? もっと短い! 大変ですね.
オーラル,ポスター
用例:ところでオーラルなん? ポスターなん?
言い換え:ところで,あなたの発表は,口頭発表ですか? それとも,ポスターによる発表ですか?
- オーラル = oral presentation = talk = 口頭発表
セッション,チェア
用例:次のセッションのチェアは,X大のY先生ですか.小さな学会だから,実行委員長がしないといけないのか.
言い換え:次から始まる一続きの発表,座長は,X大学のY先生なのですね.小さな会議なので,実行委員長がなさるのですね.
- チェア = chair = chairperson = session chair = 座長 = 司会者
- 実行委員長 = conference chair = editor in chief
- 「セッション」に対する良い日本語は,ちょっと思い浮かびません.通常,一つのセッションでは途中休憩なく発表が行われ,その間,座長は同じ人が務めます.セッションを終えるときに,「発表者,および質問者に対して,感謝の気持ちをこめて拍手しましょう」と座長が言って,部屋のみんなで手を叩くのが,慣例となっています.
単著,共著,ファースト,責任筆者
用例:単著じゃなくて共著? ファーストはどなた? 学生さんね.責任筆者はまた別なのね.
言い換え:その論文は,著者は一人ではなく複数人いて,その著者名の最初は,学生さんですか.連絡先となる人はまた別なのですね.
- ファースト = first author = 筆頭筆者 = 筆頭著者
- 責任筆者 = correspondence author = 責任著者 = 連絡先
登壇者
用例:登壇者は学会員でなければなりません.当日入会を歓迎します.
言い換え:学会員でないと発表できません.ただし,投稿時に学会員でなくても,発表の日に入会するのであれば,差し支えありません.
- 登壇者 = 発表者 = プレゼンター = presenter.「プレゼンテーター」は間違い.