小ゼミで,多くの学生の挙動を見ていて,「分からない」ことに慣れ切っているのかなと,思うようになりました.
3年生や4年生にとっては,他の学生による,まったく知らない研究の話を聞かされても,素直に頭に入らないのかなと想像します.
さらに,研究室配属までに受けてきた,90分単位の授業の中で,ある時点で分からなくなったらその後はさっぱり分からない,けれどもここで退席したり欠席したら,合格点を取れないから,分からないなりに聞いておこう,という行動スタイルが,定着しているのかもしれません.
「分からない」ことへの慣れを,少しでも減らすためのアドバイス,講義とゼミに分けて,書き出してみました.
講義中の「分からない」を減らす
話を聞いていて,さっぱり分からなくなったら,「ついていく」と「ふりかえる」を同時進行で行いましょう.
両方を100%というのは無理ですから,例えば「ついていく」のは20%くらいで,先生がおっしゃっている重要なキーワードを書く程度とし,「ふりかえる」のに80%くらいとってもいいと思います.
「ふりかえる」方法は,次の2つです.
- 定義の確認
- 知りたいのがWhyか,Whatか,Howかの識別
定義そのものが見当たらなければ,かわりに,初めにどこで出てきたかを探しましょう.
Why/What/Howの識別は,情報セキュリティの用語を例に出してみますと…
- Why: なぜPKIが必要なのか/なぜ今,PKIを理解する必要があるのか
- What: PKIの構成要素は何なのか*1
- How: PKIで,証明書に含まれている公開鍵を使うためには,どのような手順をとらないといけないのか
先生がおっしゃる中で,また配布される資料の中にも,知りたいと思ったWhy/What/How*2の情報が書かれていないことがあります.その場合は「Why」「What」「How」とだけ記録しておき,復習時に再度探すなり,Webで検索するなりしましょう.
ところで「分からない」対象は,上に書いたような,少し調べたら答えが出そうなものに限りません.漠然とした「分からない」も,あるわけです.これについては,別の考え方が必要です.
- 分からないことが,今の授業の今後の話に影響するか
- 分からないことが,次回以降の授業に影響するか
- 試験までに,分かり,問題に答えられるようになりそうか.Noなら,今もしくは復習時に,何をすればいいか
- 隠された背景(先生は当然知っているものと思っているが,自分にとってはどうなっているのかよく分からない事柄)があるのではないか
これらのいずれかで自問するのに50%,先生のおっしゃる字面を記録するのに50%くらいを費やすほうが,記録100%だとか,突っ伏して眠ること100%よりも,「学ぶ」ことにつながるんじゃないかと期待します.
ゼミ中の「分からない」を減らす
ゼミ発表については,次の前提から出発します.「ある発表の内容が分からなくても,差し支えない」のです.
それなのに,ゼミで学生からの質問を奨励し,質問がなければ先生が叱咤するのは,なぜかというと,自他の研究に対して,常に問題意識を持つことを,要求しているからです.問題意識は,批判的精神とも言います.
なぜ自分の研究(発表)だけでなく,他の人の研究(発表)に対しても,問題意識を持たなければならないのかというと,その活動を通じて,自分の研究を高めるためです.
自分の研究を高めるというのは,研究内容を盤石にするということです.論文がスムーズに書け,先生の質問にも阿吽の呼吸で答えられるようになるのを,理想形として,現実そこまで行かないのですが(私も行き着いていないのですよ!),高みを目指してほしいと,強く願っています*3.
さて,ゼミでの「分からない」を探るのにも,講義のところで説明した「定義に立ち返る」「抜けているのはWhyかWhatかHowかを知る」というのは,ロスの少ないアプローチだと思います.
質問例については,10日前に書いたので繰り返しません.やみくもに質問するよりも,「こう質問すると,どんな答えが返ってくるかを考えてから,質問する」のを,3年生,4年生のうちからやっておくほうがいいのかもしれないなと,最近,感じています.
どうしても思い浮かばなければ…自分が質問をするのをあきらめ,かわりに,質問・コメントと回答を書き留めてみてください.殴り書きでかまいません.そしてゼミのあとで見直し,電子化します.1か月(2人/週×4週=8人)もすれば,質問の傾向が見えてきます.
当番制の議事録と別に,書き留めてテキスト化してみてねということです.見比べると,どこを聞き漏らし,どこをよく聴いていたかが分かります.議事録よりも多く書いた箇所が,あなたの持ったその研究への「関心」となります.