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円の面積,円周の長さ

円の面積

質問: 円の面積は \pi r^2 って書くじゃないですか.でも正方形の面積は a^2 ですよね.この \pi って何なんですか?

回答: \pi は円周率を表す文字で…というのを知りたいのではないのですよね.\pi をかけていて,しかも \pi=3.14 というのだったら,円の面積の方が,正方形の面積より大きいように見えることが,気になったのでしょう.
その不安は,円の面積の中で出てくるrと,正方形の面積の中で出てくるaが何なのかに注意をすれば,解消できます.rは円の半径,aは正方形の一辺の長さですね.
そこで,正方形に内接する円を図示してみます*1

このとき,a=2rです.すなわちaは,正方形の一辺の長さであると同時に,内接する円の直径となります.この図で,円と正方形の面積を比較してみます.
円の面積は,\pi r^2ですが,そこにr=\frac{a}{2}を代入して,少し計算すると,\frac{\pi a^2}{4}となります.あとの説明の都合で,これを\frac{\pi}{4}a^2と変形しておきます.
正方形の面積は,a^2ですが,そこにa=2rを代入して,少し計算すると,4r^2となります.
こうすれば,比較ができます.rを使った場合,正方形の面積は4r^2,正方形に内接する円の面積は,\pi r^2 です.r^2の係数は,それぞれ4と\piです.もちろん\pi<4です.そこから,正方形の面積は,それに内接する円の面積よりも,大きいと言えます.
もちろんそんな計算をしなくても,図を見れば,正方形が円を覆っているのだから,面積が大きいに決まっています.しかし適切に文字をおいて,面積を式で表し,正方形の一辺の長さをaという文字でおいたのを消去するようにすれば,正方形と(「その正方形に内接する」という条件がつきますが)円の面積を比較することができるのです.
aを使った場合で,面積を比較しておきましょう.正方形の面積はa^2,正方形に内接する円の面積は,\frac{\pi}{4}a^2 です.ともに,係数かけるa^2です.正方形の面積のほうの係数は,「イチはイチイチ書かない」の1です.円の面積のほうの係数は,\frac{\pi}{4}ですが,\pi<4なので,\frac{\pi}{4}<1です.このことからも,正方形の面積は,それに内接する円の面積よりも,大きいことが確認できます.

円周の長さ

質問: 円周の長さは 2\pi r ですけど,なんで2って書くんですか?

回答: 言葉だけで言うなら,円周の長さは,直径と円周率をかけたものとなります.円周率はもちろん\pi.半径をrとすると,直径は,2rですよね.それで,\pi\cdot 2rという式を,中学で習う,式の標準的な書き方にすると,2\pi rとなるわけです.
図でも,考えてみましょうか.前の質問で描いた,正方形に内接する円のうち,右上の部分だけに着目します.そのとき,内接円と正方形には,2つの接点をもつのですが,その2つの接点を両端とする,線分も引いておきます.

こうすると,一辺の長さがrの正方形について,右下の頂点から左上の頂点へ行く方法が何通りかあるように見えます.番号を振ってみます.

1番目は,まっすぐ行く方法,2番目は,弧として行く方法.3番目は,正方形の右上の頂点を経由し,ただし経由地までとゴールまでは直線で行く方法です.もちろん,右下,左下,左上と,正方形の辺をたどっていく行き方も考えられますが,3番目のと長さは同じなので,省略します.
さて,この3通りのそれぞれで,長さを求めてみます.1番目は,底辺の長さがrの直角二等辺三角形の斜辺の長さです.これをxとおくと,平方根2次方程式を習っていれば,x=\sqrt{2}rが得られます.中学2年までの知識でも,x^2=2r^2という等式を求めることまではできて*2x<\frac{3}{2}rすなわちx<1.5rと言えます.
次に2番目ですが,この弧は,円周全体の4分の1です.円周の長さを求める式は 2\pi r と知っていますから,弧の長さは,\frac{2\pi r}{4}=\frac{\pi}{2}rです.
最後の,正方形の頂点を経由する場合の長さは,経由地まででr,ゴールまででまたrですので,足して2rです.
3つの長さを見直してみると,順に,\sqrt{2}r\frac{\pi}{2}r2rです.rは共通で,係数が異なります.その大小関係は,\sqrt{2}<\frac{\pi}{2}<2となります.先ほど書いたのを使えば,\sqrt{2}<1.5です.また,3<\pi\pi<4ですから,2で割れば,1.5<\frac{\pi}{2}\frac{\pi}{2}<2となります.
いろいろ書きましたが,係数に関して\sqrt{2}<\frac{\pi}{2}r<2rとなるということから,弧の長さは,一切寄り道をしない,その両端からなる線分(弦)の長さよりは大きく,大幅な寄り道をしている,2つの線分の長さの和よりは小さいと言えます.図形を見れば,確かにそうですね*3

何これ?

中学の時に公式として覚えた「円周の長さは 2\pi r」と「円の面積は \pi r^2」について,文字や式の意味,大小関係に注意しながら,見直してみたという文章です.
中学1〜2年のときに,こういうのを読んでいたら,もっと数学を楽しめただろうなあというような書き方を,心がけてみました.
小中学生で学ぶ範囲であっても,こうして少していねいに書いてみると,「複数の求め方・行動の仕方が存在すること」「共通部分を作って,それ以外のところで比較すればよいこと」など,大学教育・工学教育にも通じる知識を,再確認することができました.

*1:正方形が与えられたときに,定規とコンパスだけでその正方形に内接する円を描くというのは,中学1年生にとっていい練習問題だと思います.円の中心を決めるのが第1段階,円の半径となる線分を求めるのが第2段階です.

*2:この直角二等辺三角形の面積を,rxを用いてそれぞれ表すと,\frac{1}{2}r^2=\frac{1}{4}x^2となります.

*3:右下の頂点から左上の頂点に行くルートの最小が\sqrt{2}r,最大が2rというわけではありません.例えば,基本的には弧に沿って進むのだけれど,途中で,その正方形を外に出ることなく,ぎざぎざに進むことにすると,ぎざぎざの作り方次第でいくらでも長くできます.