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大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

研究者の段位,大学教育の慣性の法則

はてブでときどき,「自分が学生のときに読みたかった」といったコメントが書かれていることがあります*1.今回取り上げるのは,「自分が教員になる前に読みたかった」と,強く感動した本です.

大学教員準備講座 (高等教育シリーズ)

大学教員準備講座 (高等教育シリーズ)

この本のポイントは,「おわりに」(pp.216-217)で4項目にまとめられています.そこから語句を抽出し,自分なりにアレンジすると,「大学教員活動の実用性を重視」「研究・教育・学内運営・社会サービス…幅広い職務の紹介」「しっかりした根拠に基づく知識・ノウハウ」「大学教員になることを支援」といったところです.
ざっと目を通して,いちばん痺れたのは,p.184上方の表13.2です.「研究者の能力向上のステップ」という表見出しがついています.表の下にはこの出典が書かれており,本エントリから見ると孫引きになりますが,自分としては引用する価値大です.なお,本文では2段以降の段位は算用数字で書かれています*2が,段位は漢数字の方が自然なので,書き換えています.

初段:与えられたテーマで実験して結果を出せること
二段:自らテーマをみつけ仮説を立てられること
三段:自分の名前で研究費を獲得できること
四段:独創的な研究を着手遂行できること
五段:研究領域で不可欠な人材となること
六段:研究領域を代表して組織を率いること
七段:独自の研究領域を提案し予算枠を獲得できること
八段:国家の科学技術基本政策を策定遂行できること
――
出所:入来篤史(2004)『研究者人生双六講義 (岩波科学ライブラリー 96)岩波書店,p. 15.

自分自身は,初段・二段は一応クリアしていて,三段については科研費で研究代表者として2度獲得していますが,コンスタントとは言い難いです.四段については足を踏み入れたところです.五段以降は,先のまた先です.
本に戻って,年代別の大学教員の仕事の進め方(pp.186-187)も,勉強になりました.5章(pp.63-75)のタイトルは「学生に書く力をつけさせる」で,具体的にはレポート作成を取り上げていますが,プログラム作成(の指導)にも役立つ記述が多数です.次の文にもまた,痺れました.

大学教授法を改善する際の本質は,「自分がかつて教わった方法で教える」という「慣性の法則」をいかに打ち破るかという点にあります.
(p.64)

*1:私の過去のエントリにも,そういうのがついた記憶があるのですが,さていつだったか….

*2:最近読んだhttp://www.janjanblog.com/archives/15509にも,「山下泰裕8段」という表記があります.それを含む文について,最初,「え,柔道では(自分としては)神様のような存在の山下氏も,女子選手を殴ることがあるのか」と勘違いしてしまいました.