- 作者: 入来篤史
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/02/22
- メディア: 単行本
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そこには,引用では知ることのできなかった興味深い情報が含まれていました.まずキャプションは「図2 研究有段者(プロの研究者)初段〜八段」です.図の中に段位は書かれておらず,かわりに算用数字が,各項目の右側に振られています.その数字の右には膨らみが2つありまして,『右下の紡錘形の影は,平均的な大学院の修了時点での各レベルの大学院生数の分布です.また,右上の紡錘形は仮想的なある大学の教授の各レベルの分布の想像図です(これは異論があるかもしれませんが)』(pp.14-15)とのこと.ドクターコース修了時は「(二段)自らテーマをみつけ仮説を立てられること」の少し下を最頻値として五段のところまで伸びており,教授の水準は「(五段)研究領域で不可欠な人材となること」と「(六段)研究領域を代表して組織を率いること」の間が最も大きな幅になっています.
図中に段位を書いていない理由は,p.69の図から推測できます.こちらのページにも,8段階がそのまま書かれているのですが,添えられているのは段位ではなく「?周目」です.研究遂行・成果公表・評価・再投資を基本サイクルとして*1,その中で業績を上げ専門性を高め,『概ね三〜五年かかって一周する見当』(p.70)でステップアップせよという,“研究者人生双六”の進み方を提案しています.
さて,この本の第六講,普通の本の言い方だと第6章にあたるところは,座談会形式になっています.一人の著者が複数の意見を書き分けたいときの常套手段ですね.最初ぱらぱらと眺めたときには,話者の名前がRS, KM, JK, BBとなっていて,何か有名な外国の方のイニシャルかな,思い浮かばんなあと思っていたのですが,きちんと読み直した際,座談会のセッティングのところで,面食らいました.
ここでは幾つかの考え方を代表するかたちで次のような,RS,KM,JKの三氏に討論をお願いしました.(略)
RS(老子/荘子をイメージして頂くと分かり易いと思います)は,研究者の個人的生活の充実感や素朴な研究遂行それ自体の重要性を尊重する立場の考え方にたってもらいます.
(p.91)
RSって,一人の人のイニシャルじゃなくて二人なのね.次のページに行く前に,KMは孔子と孟子で,JKは荀子と韓非子かなと想像したら,ぴったし当たっていました.
KM(孔子/孟子のイメージです)さんには,遂行した研究の成果を学界に問うて,研究者社会全体の統一性一貫性を重んじ,社会全体としての学問の発展を願うことを尊重する立場を代表してもらいます.
JK(荀子/韓非子のイメージです)さんには,研究という活動を通して,社会の中での人生の実際的な自己実現をめざし,現実世界における実効を追求する,研究の社会還元を尊重する色合いの強い立場にたってもらいます.
(p.92)
座談会の発言内容よりも,これらの人物像から分かる,研究者の持つ価値観(の多様性)が大事なんだなと思うようになりました*2.なお,BBが誰で,どんなキャラクタなのかというのは,本を読む人だけのお楽しみとしたいと思います.実際のところ,/.+子$/ ではなかったこともあり,該当箇所を読むまで名前が思い浮かばなかったのでした.