「やっと起きたか」
「うん,これから朝ご飯作るね.うちの子は?」
「下に行ったり上に来たりなんやが」
「ミルクは?」
「飲み終えてたんやが,飲み方すごいな」
「?」
「あの子用のイスに座ってやな,両手を横んとこに置いて,哺乳びんを口の力だけで持ってたんやで!」
「あー,するする」
「ちゃんと持って飲みなさい,言うて持たせても,手ぇはまた元の位置や」
ここで野暮な解説:哺乳びんの中にゴム製のチューブが入っておりまして,持ち上げなくても飲めるようになっています.
「昨日の昼間しか,すごかってんで」
「何かあったんか」
「おばあちゃんがりんごを切ってくれて,この子が取るんやけど…」
「…」
「両手に一切れずつ持ってな! 左手のんをがぶりとやって,すぐに右手のんをがぶりなんやで!!」
「そら豪快やなあ」
「ちょっとこの子,食べ物については贅沢させすぎやなあ」
「まあ,田んぼや畑で作ったり,料理して食べさせたりする側になるまでは,それくらいの贅沢でもええんとちゃうんかねえ」